こんな化け物が公道走行可能とは…

 

 

80年代バイクブーム世代の小僧が、おっさんになって手に入れた憧れのドゥカティ。

そのまま乗っていればよいものを、あれやこれやとカスタム化の道を歩み、期せずして散財する結果となった。

 

 

 

空冷904cc エンジン搭載の DUCATI 900 SL は、ビッグバイクながら素人ライダーにも手に負える範疇の「ほどほど感」があり、ネオクラシカルな美しい外観といい、生涯乗り続けるものと思っていた。

 

しかし、人生には転機がつきもの。新しい商売を始めるたびに多忙さに拍車がかかり、乗る機会がめっきり減ってきた。特に、ひとり娘が難病を患ってからというもの、メンテスタンドをかけっぱなしでほぼ乗らなくなってしまった。

 

まったく乗らなくても、金だけはかかる

毎年6,000円の税金、2年に一度の車検は、もはや金をドブに棄てるいるようなものだ。このままではもったいないので、断腸の思いで売却を決意した。

 

…そんな矢先、闘病中の娘が亡くなった。およそ4年におよぶ闘病の末、懸命な努力も虚しく、天に召されてしまった。2017年10月のできごとだ。

 

当時の気持ちは思い出したくもないのだが、なかば自暴自棄というか、なにかとんでもないことをしたくなった。そして、予定どおり DUCATI 900 SL は手放したが、それを下取りにして、5年落ちの DUCATI 1199 "S" を契約してしまった。下取り価格60万、追金は120万円。実質180万円のバイクである。軽自動車が買える。

いま思えば、とんでもないことをしたものである。

 

かくして、思いがけずスーパーバイクにまたがることになった。

 

 

▲ たいへん高価なバイクでありながら世界中で大ヒットした 1199 Panigale 。ドゥカティ伝統のトレリスフレームを棄て、より軽量で強度のあるモノコックフレームとなった。しかしながら、1200cc もあるのにL型2気筒を堅持したのはドゥカティの意地だ…なんて称賛していたら、この数年後、メインのシリーズはあっさりV型4気筒になってしまった。これも時代の流れだ

 

 

ご存知のとおり、『S』グレードは、ファクトリー出荷時からスペシャルパーツが奢られている。しかも当物件は本国仕様に改造されており、さらに、限定モデルのイタリアンカラー。新車価格は300万円を超えただろう。いやはや…だ。

ここまでデキあがっていれば、もはや手を入れるスキはない。

 

 DUCATI 1199 "S" がどんなバイクかというと、こんなのが公道を走っていいのか、というのが率直な感想だ。すさまじい加速力は、あたかも映画『スターウオーズ』のハイパードライブのようだ。とてもじゃないが、公道でフルスロットルにする気にならない。実際、どのギアでもおっかなくて8,000回転以上はエンジンを回せなかった(恥)。

 

一方、操縦性は至って素直で、DUCATI 900 SL のように曲がったり曲がらなかったりというクセがない。低回転でトルクがまったく出ない点は相変わらずだが、パワーに余裕がある分、あっけないくらいに乗りやすい。

 

20年の時を経て、ドゥカティもだいぶフレンドリーなバイクに進化した、ということかもしれない。

 

 

 

▲ つるんで走るのが苦手なので、ソロで道内あちこちの手打ち蕎麦を食べに行くのが休日の習慣。とにかく目立つバイクなのでよく話しかけられたものだ