またもや書いてみました。
「ハンバーグが人気の店」
四丁目公園の横に、
ハンバーグが美味しいと評判の店がある。
「マスター、いつ食べても美味いねぇ!
なんか、味に独特な旨味とコクがあって
クセになる味なんだけど…?」
あまりの美味しさに感動し、
そう尋ねてくるお客も少なからずの中、
オーナーシェフである店長はただひたすら、
ニコニコと笑うばかり。
因みに、店長の名をA男と言う。
その店の近くには大学があり、
値段設定もリーズナブルなことから、
学生たちからも大層人気の店である。
A男は40半ばの醤油系フツメン。
薄毛で控え目な男。
客商売には似つかわしくないほどの
陰キャで優しい印象の男である。
そんな彼を目当てに集まってくる、
性格の歪んだ女性客も少なからずいた。
B香もまた、そんな女性客の1人で、
女子大生でかなりの肥満体型。
言いやすいのかA男にだけは毒舌を吐き散らす。
ある日、こんなことがあった。
小馬鹿にしたような口調でB香は言った。
「テンチョーっ、なんか此処のハンバーグって妙な獣臭がするっていうかクサいW」
然しA男は、嫌な顔ひとつ見せず
ただひたすら、ニコニコと微笑み
「それも当店の特徴の1つでして…。また人によって味覚は違いますから…」と言うばかり。
するとB香は、
A男の答えが如何にも不服と言わんばかりに、
「でも…だって!なんか味とか違うから。牛とか豚の味じゃないし!」と抗議してくる。
然し、この時にもA男は、
不愉快そうな素振りなど微塵も見せず
「いや、それはですね…」と言い、
ニコニコと微笑むばかり。
そうやって、
まったく怯まないA男を見てB香は、
益々ムキになり、然も疑ったような口調で
「まさかテンチョー、ヤバいお肉じゃないのぉ…?
ネズミとか…?それとも…?」と嘲るように鼻で笑った。
すると、そう言われた瞬間、
Aの眼光が微妙に険しくなった。
然しA男は、別に激情するでもなく、
あくまでも冷静に然も畳み掛けるように、
「牛・豚など何種類かの獣肉をブレンドして使ってます。
どれも3日間から10日間熟成した精肉を特製のマリナードで漬け込んで使用してますので、味とコクに深みが出ていて、他店では味わえない独自の味となっているんです。」
と、そう言い放ったのである。
B香は、そのA男のあまりの気迫に押され、
思わず怯みながら
「…いや、ごめんなさい……。別に店長怒らせようと思ったわけじゃないんです」と、消え入りそうな声で言ったのだ。
それから数日後。
例の件があって気まずいのか、B香は暫く姿を見せなかった。
然し1週間ほどして、B香は再び来店した。
「店長、いつぞやは失礼な言い方してすみませんでした。」
遠慮がちな小さな声で言うB香を、
目を細くして見つめるA男。
そして、その様子を見るなり、
B香はホッと安心したように
「あ、よかった…。 もう出禁になるかと覚悟してきたんですけど…ちょっとおトイレ…」と言うなり、注文もせず席を立ってしまった。
その様子を見届けたA男は、ニヤリと片方の口角を上げポケットから鍵束を出しながら入口へと向かう。
そして徐に、鍵を閉めながら
あのダークなコクと深みが君にはお似合いだ〜♪
などと、小声で口ずさむ。
そして鮮やかに踵を返すと今度は
西側にしか無い大窓のブラインドをすべて閉めてしまう。
その間もA男は鼻歌を絶やさない。
そして最後にキッチンへと入り、包丁立てから、肉切り包丁の大小やら骨切り包丁などを
チョッピングボードの上にずらりと並べておく。
と、そのタイミングで。
B香がフロアへ戻ってきて、先ずブラインドが全部閉まっていることに違和感を感じてしまう。
「店長……なんで?」
「いや、再度ご来店のお礼として、本日はB香さんの貸切にするからね」
そう言って微笑むA男の両手には、しっかりと太縄が握られている。
「い、いや…!助けて…」
「助けるって誰を助けるのかな〜♪」
「ご、ごめんなさい…!意地悪ばかりして!もうしませんから…」
「ええーー!? 謝ることないさ。B香は十分お店のために貢献してくれてるのに」
A男はそう言い、ケタケタ笑う。
「きゃあ……!」隙をついて逃げ切ろうとしたB香だが、終には隅のコーナーまで追い詰められてしまった。
「さあ、これから更に貢献してくれるよね?」
そう言いながらA男が覆い被さってくる。
そして数週間後、A男の店に新メニューが登場し、早くも人気を呼び始めているという。その名も「香り高いBぷにょステーキ」。