ここ数ヶ月間という長きにわたって
リビングルームの入口のガラス戸が、触ってもいないのに勝手に閉まる・ガラス戸の向こうに人らしき姿が一瞬だけ見え、「だ、誰だっ??」等と叫んだ途端に人影は見えなくなり、後には薄気味悪さだけが残ってしまうという…。
どう考えても、心霊現象としか思えない現象に悩まされていた。
そんなある夜のことであった。
その日は、いつもは5時頃に作り始める夕食が午後7時過ぎになってしまい、そそくさと用意をしパクパクと食べていたところ、
例のリビングルームのところのガラス戸が、
ガタガタっと凄まじい音を立て揺れたのである。
「ヤバイ、、地震だ!?」
反射的にそう思いスマホで調べるも、然し。
どうもそういう訳でもないらしく、
そして刹那に、脳裏の片隅に、
もの凄く嫌な予感が湧き上がってきたのである。
「また始まった……💢」
大方の検討は付いていた。
それだから一応、警告だけは発しておく。
「もー、やめてもらえません?ご飯食べてるんで。」
するといつもの如くにガラス戸が
一度だけカタッと鳴る。
恰も、こっくりと頷いているかのように。
多分、「音の主」はこの物件の先住者なのだろう。
どうも筆者は体質的に、気配とか「気」に含まれる残留思念を割と敏感に感じ取るタイプなので、こう言う特性が時に、辛く感じてしまうことも少なくないのである。
恐らく「音の主」は生前、何なら80過ぎた独居老婆だったようだ。
不動産屋さんから事故物件だとの告知はされなかったので、この物件で孤独死した訳ではないだろう。
然しそれでも思念が残るということはつまり、
この現し世に何らかの未練とか執着があるということだろう。
ーーああ、つくづくも。せめてこの命が果てる時にはそうはなりたくないものだーー
恐らくは、筆者がそう思わざるを得ないほどに、
「声の主」は心残りな、そして孤独な、多分何人もの知己や身内を恨みながら息を引き取った人なのだろう。
でも…。そんなこという筆者だって。
こんな物件を手頃だと喜んで入居した身だ。
つまりは、目の寄るところに玉が寄る……。
まさか、そういうことがないことを望んじゃいるのだが、然し。 客観的に見りゃ自分なんて、たった一つの夢に拘らんが為に命が惜しいのだから。
憎しみは手放そう、あの人が私にしたことを赦そう。
そういう綺麗事を決心するだけなら実に容易い。
……が、それを永続するのは、翼もない身で空を飛ぶことよりも更に難しい。
そういった類の後ろめたさの裏返しで、幽霊先住者にはムチャクチャ腹立つ。
だからついつい、当たりがキツくなる。
午前1時過ぎに床に就けば、なんだかキッチン辺りに気配を感じる。
最初はこれでも我慢してたが。
十数回もやられるとさすがにキレてしまうので
それだから
「バカもほとほといい加減にしろよー!」
などと説教口調になってしまう。
そのせいでだろうか?
ここ一ヶ月ほど、あのばぁちゃんの気配が消えたようなのだが……?
