【缶コーヒーの想い出】
父の急逝から商売を継いで半年が経った、23歳の時。
カンカン照りの真夏でした。
配達先はビーズ刺繍をされているお客様でした。
お客様の場所は雑居ビルの3階。
ご注文いただいたケースの納品のため、4往復しました。
階段の上り下りで汗はダクダク。
脱水症状を起こしそうなくらい意識は朦朧。
けれど、お客様にはその様子は見せたくなかったので、
かなり作り笑顔で、納品後「ありがとうございました!」と言いました。
その後、お客様から、
「暑いのに本当に御苦労様~。
これ安いのだけど、飲んでね♪」と言われ、缶コーヒーをいただきました。
それは、大手から発売されている缶コーヒーではありませんでした。
よく行くホームセンターでは39円で売っている缶コーヒーです。
「ありがとうございます!」と言って、ふらふらになりながら階段を下り、
運転席に乗り、すぐに缶コーヒーをプシュッと開けました。
グビグビグビっと190mlのコーヒーを一気に飲みました。
微糖と書いていましたが、すごく甘かったです。
この時のお客様からいただいた安い缶コーヒーが、
私にとって31年間生きてきた中で、1番美味しかったのを覚えています。
■お客様が御苦労様と言ってくれたこと
■配達という当たり前のことをしただけなのに、
缶コーヒーというサプライズプレゼントをいただいたこと
■意識朦朧としている中、コーヒーが力水となってくれたこと
この3つがコーヒーの味+αとなって、体の奥から何か込み上げるものがあり、
私はトラックの中で泣いてしまいました。
それ以来、私がお客様にしていただいたように、
私は仕入れ先の運転手の方には、「会った時にはコーヒーをあげよう」と思い、
今までやり続けています。
でもね、この時、嬉し涙と同時に
「なんで、この時まで気がつかなかったんだ」という思いもあったのです。
その理由は、父と母の存在でした。
父はよく、儲けなどは度外視で、仕入れ先、得意先に
サプライズプレゼントをしていました。
得意先には「坊主にこのうまいパンをあげたって」と言って、
いつも納品もないのにブラリと顔を出していたそうです。
仕入れ先には、奈良の吉野の帰りには、みかんを1箱買って、
遠回りしてまで持って行っていたそうです。
父が空から私を見るようになり、
もう8年以上経ちますが、未だにお客様には父の話を聞きます。
本当に誇りに思える父です。
また、母は、近所の人に料理や貰い物を配ったり、
子供たちにはいつもお菓子をあげたりしていました。
今でも毎日といっていいくらい毎回違う友人が悩み相談に来られます。
そんな母ですから、今でも近所の若い奥さんが、地方にいる自分の親より
近くの私の母を慕ってくれます。
これだけ何でもある時代なのに、未だに醤油を借りに来てくれます。
この人望、私にも欲しいくらいです。
そんな親に育てられたのに、私は自分のところに納品に来てくれる人に対して、
「御苦労様です」しか言ってなかったのですね。
ですから、「なんで、今まで気づかなかったんだ」とショックも受けたのです。
つい昨日、仕入れ先に納品に来た(全然私には関係のない)
配達員の汗だくの姿を見て、ふとこの日のことを思い出し、
私は缶コーヒーをおごりました。
その時の運転手の笑顔は昔の私と同じ顔をしていたと思います。
大半のお客様が納品後「御苦労様~」と言ってくれます。
また、暑い日には缶コーヒーか冷たいお茶をいただけます。
過去にはみかんやリンゴもいただきました。
今、このブログを書きながら、
このようなお客様に支えられて商売させていただいていることを
幸せに思わないといけないなと思っています。
そして、ブログを介して、多くの方にも見ていただけるようになりました。
本当に感謝しております。
皆さんには缶コーヒーの想い出はありますか?
私は、8年前の夏の暑い日でした。