ラストパス 1 | Jリーグが好きやねん

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「名古屋に弱点らしい弱点はない」

大阪の監督である南野は、表情を変えずに告げる。
名古屋に穴がないことは、南野の前に座る大阪の選手全員が知っている。
同じ高校生とは思えない体格の彼らの試合を、何度も見た。

前線に195cmのクリントン
センターバックに190cmのリオ
ボランチに192cmのダニー
そしてトップ下にイヴァン
積極的な留学生と南米系帰化日本人の子息の登用で、高校クラスでは圧倒的なフィジカルを持つセンターラインを揃える。

さらに、ゴールキーパーは奈良沢。
名古屋キャプテンであり、前大会1試合目から決勝までの6試合で3失点という堅守を誇る。

システムは4-1-2-3で、とにかく自陣ゴール前が圧倒的に強い。
ヘディングと対人にほとんど負けないリオ。
危険な場面ではファールも躊躇せず、彼のいる名古屋ゴール前での空中戦、1対1はただでさえ攻略困難だが、そこにボランチのダニーも加わる。
長身ながらスピードとスタミナがあり、南米ルーツらしからぬ献身的な守備をする。
そして、ミスらしいミスがほとんどない奈良沢。

この守備陣で刈り取ったボールは、ほぼすべて、センターハーフのイヴァンに送られる。
運動量が少なく、守備力がないことを除けば、弱点がないMFである。
送られてきたボールをキープし、たいていの場合、相手が食いつくところまで自分で運ぶ。
2人か3人の相手を集めたところで、左右にさばく。
聞くと簡単そうだが、プレッシャーの激しい敵陣中央でこれをこなすのは、そう簡単ではない。

左右に送られたボールは、ウィング、またはサイドバックが中央にあげる。
名古屋のクロスは、取り立てて精度がいいわけではない。
しかし、それでいいのだ。
キーパーさえ出てこれなければ、それで十分だ。
ほとんどの競り合いに、クリントンが勝つ。

名古屋のクロスはキーパーを避けるため、ゴールから遠い。
そしてクリントンに競らせるために弾道が高い。
こういうクロスを頭で入れるのは難しい。
枠に飛んでも、シュートスピードがない。

だからクリントンは、ペナルティエリアのどこかに落とす。
クロスが上がった時点で、クリントンの周りには3人の名古屋アタッカーが押し寄せる。
落としたボールに先に触られれば、高い確率で至近距離でのシュートが飛んでくる。

鉄壁の守備
抜群のキープ力と視野でサイドにさばく中盤
頭の届くところにクロスが来れば、相手の人数に関わらず勝てるポスト
それを至近距離からたたき込むアタッカー

個の力を最大限に活かし、徹底して効率的で現実的なサッカーで勝ち進んできた名古屋。
このインターハイ優勝候補であり、次の準決勝の相手だ。