退学処分を巡る紛争においては,自主退学勧告に関する議論を避けて通れません。

自主退学勧告について説明することは多岐にわたるため,何回かに分けて解説したいと思います。



自主退学勧告の大きな特徴としては,校長が懲戒として行う退学処分と異なり,学校側の一方的意思表示のみにより学生生徒の身分を失わせるものではありません。

したがって,強制力を伴うものではない以上,自主退学勧告を受けたからといって従う必要は本来全くありません。


しかしながら,現実においては,自宅謹慎処分や停学処分(どちらも大抵無期限であることが多いです,)と並行して勧告されることが多く,勧告を受け入れない限り,数ヶ月もの間登校できずに過ごさなければならないケースを散見します。

このような状況は,学生生徒に対し著しい焦燥感をもたらすものであって,最終的に心が折れて自主退学に応じてしまうケースも存在します。


また,学校側が短期決着を望む場合には,「●日以内に自主退学しない場合は,退学処分を下します。」と直接的に迫ってくるケースもあります(むしろ,昔はこの手口の方が主流だったと思います。)。

この場合,仮に自主退学に応じなくとも,学校はなかなか退学処分には踏み切らないのですが(退学処分による学校のデメリットについては,後日解説します。),実際に退学処分となることへの恐怖心から,半ばパニックの状態で自主退学に応じるケースも少なくありません。



このように,自主退学勧告は,退学処分という強硬手段を回避しつつ,学生生徒を学外へ排除する有効な手段として,頻繁に利用されてきたという経緯があります。

次回では,かかる自主退学勧告の問題性について,判例を踏まえて検討しようと考えています。