「会社と人をキラリと光る存在に変える」

未来価値創造パートナー 渡邉敦です

 

「“まだ見ぬ未来に向けた価値創造” が
普遍に変わる喜びを50万人に伝える」

ミッションを掲げ

「自己実現した人にしか見えない風景の

創出に関わる」 

ビジョンを実現します

 

 

こんにちは。

 

能登半島地震で過酷な生活を強いられているみなさん、どうか生きたいと思う気持ちを強く持ってくださいね。まだまだ、成し遂げられていない夢や希望がたくさんあるはずです。そんな思いを大切にしてください。

 

さて、先日、大学で講義をした際、帰り際に4年生の学生から質問を受けました。「就職して社会人になったら、中小企業診断士の資格をとろうと思うんですが、大変でしょうか?」と聞かれました。確かに、主に企業に勤めている方などが受験する資格でしょうし、5%程度の合格率ですから、簡単だとは言えません。そこで、こう伝えました。

 

「挑戦することは、いいことだと思うよ。勉強の過程でいろんな知識を学べるし、今まで関心のなかったことにも、目を向けるようになるし。それ以上に、何年で合格するかを決めて、その年数が経っても合格できなければ、スパッとあきらめることが大事だなぁ」と。

 

これは、自分が会社で新規事業を立ち上げる時も同様のマインドを大事にしていました。誰しも自分が手掛ける事業は、なかなか実績が出なくても、いつかヒットすると思い、頑張ってやり続けてしまいます。その結果、赤字が膨らみ、どうしようもない状態で、あきらめざるを得なくて撤退する、ということほど寂しいものはありません。

 

「先に言えば説明、あとから言えば言い訳」となるわけです。赤字が膨らんだ状態では、まわりにいくら説明しても、言い訳に聞こえてしまいます。ですから、事業を始める前に「3年で利益〇〇円でなければ事業を撤退します」とまわりと握っておくんです。もちろん、そうならないように全力で頑張るんですが、ズルズルと引きずらないためにも、最初が肝心です。

 

というわけで、今日は「何事も傷を深くしない引き際が大事。ポイントは過去を脇において現在だけで判断するといいです」といった話をしてみます。

 

冒頭の学生の話に戻ると、中小企業診断士は人気の資格ですが、狭き門であることに変わりありません。勉強するものの、なかなか受からない人がいます。今年も落ちたのに、「せっかくここまで頑張ったのだから」と、仕事の合間を縫って勉強を続けます。

 

何年も仕事と勉強の両立を続ける努力と熱意をきらさないようにするのは胆力が必要です。ここで諦めたのでは、今までの努力が水泡になってしまいます。最後の踏ん張りどころにきているのかもしれず、「頑張れ!」「今度はいけるぞ!」とまわりからの励ましになんとか応えようとさらに力が入ります。

 

ところが、時間や労力といった、今までかけてきたコストは、もはや戻ってきません。試験に落ちた段階で回収不能となっています。悔やんでも、もう終わってしまった話として片づけられてしまいます。

 

にもかかわらず、「ここでやめては元も子もない」とばかり、それらも勘定に含めて今の行動を決めるのは賢明ではありません。考えるべきは、今年投入するコストと得られるリターンが見合うかどうかです。合理的に考えればそうにしかなりません。

 

それが見合うのならチャレンジすればよく、見合わないなら違うことにコストを投下する方が得策です。もっと簡単な資格を狙ったり、転職など資格以外の方法でキャリアアップを目指したりと、こういう場合は、少し頭を冷やしてあげるほうが、本人のためになるんですね。

 

こういった話はいろんな場面で起きます。

 

たとえば、ある本に興味を持って購入したとします。投入したコストは1500円です。ところが、5分ほど読み進めたものの、自分が期待していた内容とは違っていました。その段階で読むのをやめれば、これ以上の損失は発生しません。1500円も5分間ももう返ってこないのですから。

 

逆に「せっかく買ったのにもったいない」と思って3時間我慢して読み続け、やっぱり期待したものが得られなかったとしたら、損失を3時間も積み増すことになります。それだけの時間があれば、別の本を読むなど、もっと楽しいことに費やせたかもしれないのに。

 

このように、僕たちはどうしても、過去に失って取り戻せないコストを合算して現在の判断をしがちになります。これを「サンクコスト(sunk cost)の罠(わな)」(埋没費用の誤びゅう)なんて呼んでいます。現在の費用対効果だけを考えないと、合理的でない判断を下してしまう恐れがあるわけです。

 

もっとも典型的なのがギャンブルです。負けが込めば込むほど、今までの負けを取り戻そうと、どんどん傷口を広げてしまいます。受験、転職など、人生のなかでもよく起こる現象です。

 

サンクコストの罠として有名な事例は、コンコルドの話です。これは以前、ブログでも取り上げたことがあると思います。コンコルドは、英国とフランスが共同開発した超音速旅客機です。通常の飛行機の2倍のスピードを誇り、開発当時は夢の旅客機とも呼ばれていました。

 

ところが、困難な開発に膨大なコストがかかった上に、燃費がとても悪く、機体の構造上100人しかお客が乗せられません。開発段階から、商業的に成功することは不可能だと、みんな分かっていました。

 

それでも、開発はやめられず、わずか20機だけ生産され、路線を限定して定期運航することになりました。強引に事業をスタートしたものの採算が合うわけがなく、膨大な赤字だけを残して、2003年に運航停止となりました。

 

この逸話から、サンクコストに惑わされて、不採算の事業をやめられないことを、「コンコルド効果」と呼ぶようになりました。皆さんの会社にも似たような事業の話はないでしょうか。

 

人間は必ずしも合理的に考えて物事を進めているわけではありません。情緒的な判断や思考の癖が僕たちの意思決定を誤らせる要因になります。その一つがサンクコストなわけです。

 

僕たちの判断をゆがめるサンクコストの罠は、あちこちで口を広げて待ち構えています。仕事でもプライベートでも、「ここまでやって今さらやめられるか」「何のために頑張ってきたんだ」と思ったら、罠にはまっていないか、冷静になって考えてみることをお勧めします。

 

冒頭の事例でいえば、過去の努力はいったん脇に置いて、「中小企業診断士の資格を取れば、どんな便益が生まれるのか」を今一度問い直すべきでしょう。

 

ということで、サンクコストの話を出しながら、あえて厳しいことを言うのも、言いにくいですが、先輩としての務めの一つではないかと思っています。

 

 

それでは、今日も笑顔あふれる素敵な一日をお過ごしください!

 

頑張り屋のみなさんを応援しています!

 

 

「A&W コンサルティング」
 代表・中小企業診断士 
    渡邉 敦 (Atsushi WATANABE)

Mail: info@aw-consulting-office.com