黒蜥蜴 | うたかた荘

江戸川乱歩原作の最高傑作「黒蜥蜴」の映画版(1968年)

 

主演、丸山明宏(美輪明宏) 監督、深作欣二 を、先日偶然観る事ができた。

 

DVD化されておらず幻の傑作とされていたので、たまたま鑑賞できたことが

 

あまりに嬉しくて、こうしてブログを書いてみる。

 

 

元々江戸川乱歩が1930年代に書いた小説を、三島由紀夫が戯曲化した舞台劇

 

黒蜥蜴は、これまで二度映画化されていて、先に京マチ子主演版が封切られ、

 

後に当時丸山姓だった美輪明宏を、舞台同様映画にも抜擢した作品がこの深作版黒蜥蜴。

 

 

 

何といってもあの三島由紀夫が出演しており、さらに当時としてはとても斬新な

 

男同士のキスシーン(男女のキスシーンもほとんど無い時代)など、

 

日本国内のみならず、ヨーロッパやアメリカなどでも高い評価を受けた作品だ。

 

 

韻を踏む独特の言い回しや、言葉の一つひとつが画との繋がりにおいて

 

三重四重構造になっているあたり、推理小説を文学に昇華させた三島の力量は

 

まったく見事という他ない。

 

 

上写真は黒蜥蜴(丸山明宏)が探偵明智小五郎と話す冒頭のシーンで、

 

この映画の中で私が最も好きなシーン。

 

黒蜥蜴  「今日はいつもの夜とは違うような気がするわ」

      「夜がひしめいて息をこらしている」

      「精巧な寄木細工のような夜・・・」

      「こういう晩にはかえって体が熱くて活き活きとするわ」

 

この場合時間の夜ではなく、この場の雰囲気の事で、精巧な寄木細工・・は、

 

あなた(明智小五郎)の頭の中は網を張っている、という比喩的言い回し。

 

そうされると私はかえって興奮する、と言っているのだ。

 

これから起こるであろう物語(犯罪)の序章として、これ以上ないほど完璧で、

 

なんてセンスの良い表現だろうと感心する。

 

また、舞台美術を応用したかのような見事なセットや調度品の数々。

 

全体を通して怪しく薄暗いトーンの画。

 

劇中丸山が唄う挿入歌「黒蜥蜴のうた」は、当時シンガーソングライター

 

自体が珍しい時代であったが、丸山本人による作詞作曲である。

 

 

黒蜥蜴と明智小五郎が初めて顔を合わせるシーンは鏡越し。

 

まるで今後二人に起こるであろう何かを暗示しているかのようだ。

 

 

80年代に青春を送った私は、角川映画で育ったと言っても過言ではない。

 

深作監督の「魔界転生」「伊賀忍法帖」「里見八犬伝」は、当時封切られてすぐに

 

観に行き、今でも大好きな作品だが、これら映画の中に、この黒蜥蜴の片鱗を

 

伺うことが出来る。

 

 

ところで明智小五郎といえば、私にとっては子供の頃から親しみのある

 

天地茂だが、その天地茂版明智小五郎の美女シリーズ(特に70年代もの)は、

 

今でも動画サイトなどで時々視聴する大好きな作品だ。

 

土曜日の9時から、テレビ朝日系土曜ワイド劇場枠で放送されていて

 

当時お茶の間でとても人気だった。

 

ニヒルな天地茂も良いし、今と違ってツッコミどころ満載で大いに笑えるところも良い。

 

 

天地茂は、他にも非情のライセンスというドラマが懐かしく、ぜひ観たいと

 

思うのだが、こちらはなかなかお目にかかれない。

 

 

江戸川乱歩の世界観は、自分自身知らず知らずのうちに多大なる影響を受けたのではないか・・・

 

なんて、自分が作った店内をまじまじと見ては、そう思う今日この頃であった。