ランを学校に迎えに行った

 学校の玄関は 子供を迎えに来た母親でごった返していた

 ぽつりぽつりと

 子供達が玄関にやって来る

 外履きに履き替えた子供が

 ひとり

 またひとり

 母親と玄関を出て行く

 とてもおちゃめなミユウちゃんが元気に

 母親達の中に飛び込んできた

 ミユウちゃんは中三の女の子

 そして私を見つけるなり

 私の右の頬を左の掌でそっとなでて言った

 「ホント キレイなお母さんやわ!」

 はぁ?!

    (もっと気の利いたリアクションはないのか!)

 「あ、ありがとう!」

 お礼を言う私

 ランを助手席に乗せて帰る車中

 私の心は晴れやかだった

 この歳にして

 キレイだなんて…

 言われたことが嬉しかった

 笑みが自然にこぼれる

 ミユウちゃんは学校の中でも特に

 おしゃべりが上手な子だけど

 感じたことを率直に口にしてくれたのかな

 と、嬉しかったのだ

 けど お化粧を落とした顔は単なるオバサン

 四捨五入すれば50歳の一おばさんに過ぎない

 お化粧して化けてるだけだけど

 自分をキレイにしていることは

 気持ちも明るくなるよね

 いつまでもキレイなママでいたいな

洗濯機 壊れた

はぁ~

ショック

脱水できない

なんかベルトが切れたのかなぁ

よくわからないけど

下から水漏れもある

今日の洗濯物は“だら干し” 状態

干した洗濯物の下にバスタオルやら新聞紙やら敷いてー

ぽたぽた ぽたぽた水滴が落ちる

除湿機もなにやら焼け石に水

気分も落ち込むな~

明日は家電量販店に洗濯機を見に行こう

いや、買わなければならない

我が家には大きな出費となる

それに…

ウォッシュレット付きの便座も買わなきゃ

ランがね、便座の上で暴れるのだ

まぁ、詳細に説明しないと

「便座で暴れる?!」と理解できない人がほどんどだろうけど

体重も35kg近いランが暴れりゃ

そりゃどこかの配線も切れてしまうだろう

新しいのを取り付けたところで

すぐまた壊れてしまうのだろう

    (暴れながらおしっこすれば便器からおしっこが漏れちゃうし

     暴れながらうんちすれば…うんちクンもぴょ~ん、て飛び出しちゃう

      トイレでも格闘してる母子である)

だけど

冷たい便座に腰掛けるのも

寒い朝は特に辛いしね

出費がかさむけど

仕方ない


ティナが言う

「風水によると 玄関をきちんと整頓して綺麗にしておかないと、幸福が入って来ないんだって」

「ウチには入って来んな…福の神…」

母が言う

「風水のことはよくわからないけど、部屋を片付けなさい」

「片付けたいのは山々だけど…(収納下手なんだ、自称宇宙一)」

収納=捨てる、なんでしょう?

今まで捨てられなかった物、捨てよう

捨てる事で 何か変われそうな気がする

きちんと整理整頓された部屋、家にしたい

ごみ屋敷はごめんだ

さあ 捨てよう!

今日はランは学校が休みで、ずっと家に居たから

自由が利かなかったから

ゴミ袋一つ分だったけど

やはり捨てるものは沢山ありそうだ


ティナとランチした

彼女は仕事を持っている

最近 営業の功績を認められて

表彰された

私には眩しく映る…

彼女は言った

「リリ(私)は 私の周りの人達の中で一番苦労してる」

私:「え?一番?トップ?」

ティナ:笑いながら「うん、トップ!」

私:「トップかぁ。そりゃ光栄です」

ティナ:笑っている

私は いつも考えている

「なんで 生きているんだろう」

いつかは死ぬ

明日死ぬかも知れない

長くても40年間残っているかいないか…

毎日をやっとの思いで生きている

ただ時間をやり過ごしているだけだ

楽しみもない

生き甲斐もない

夢もない

願いはあっても

到底叶いはしない

母であり

妻であり

娘である私

家庭があっても心は空虚だ

ランの世話に明け暮れ

ユウの後遺症に不安を抱き

もし、

もし、

母との永遠の別れが訪れた時

「もし」

じゃないか

その時は

必ず来るから…

そうしたら

私は

蛻の殻

今より

ずっと

ずっと

空虚になるのだ

生きて行くことができるだろうか

私が死ねば

ランは生きられない

道連れ

してはいけないこと

ランの命はランのもの

私が奪うことなど

できないはずだ

できない

できない

できないはずだ

20日振りに来た

私のブログ

 “Wing Road”

ある“事件”をきっかけに 私の「顔」は悲鳴を上げた

顔全体に発疹

赤く腫れた

 朝 目覚めた時、すぐに気が付いた

おかしい!

 まぶたが垂れているのがわかったので

 ヤバイ!

 と思い 鏡を覗いたら

両まぶたともに腫れていた

鼻も大きくなっていた

輪郭もひと回り大きくなっていた

その日は祝日だったので、翌朝皮膚科に直行した

疲れが出たのだろう…

医者の見解だった

私も同感だった

毎日のランとユウの送迎

疲れが溜まっていたところに その“事件”は起きたのだった

ランがやらかしたのだ

私のケータイに学校から連絡が入った

「ランちゃんがハイターを飲んでしまって、今 病院です!」

ハイター?

あの漂白剤の?

エ~~~~ッ!

やってくれましたな…

ハイターの容器の蓋を開ける指先の器用さはランには持ち合わせていない

なのになーぜー?

なんと

給食用食器のお椀にハイターが入れてあったそうな!!

そりゃ飲むだろう

ランはきっと喉が渇いていたんだ

そこに液体の入ったお椀があれば

喉が渇いているんだから

「喉が渇いた。」と先生に知らせる事のできないランは

そりゃ飲むだろう

ああ~

頭、イタイ

ハイターを飲んだランの体を気遣うより先に(?)

ハイターなんか飲めるんかぁ?!

と 飲んだランを「すごい!」と思った母であった

病院では胃を洗浄し、投薬したとのこと

学校に戻ると

給食抜きのランは

何度となく食堂へ足を運んだそうな

カワイソー

胃の中がスッカラカンでさぞ空腹だっただろう

「今日は消化の良いものを与えて下さい。」

保健室の先生から言われた

ん~

散々だったね、ラン

その“事件”の勃発が引き金となり

私の顔はヒドイものとなった

「ステロイド軟こうを出しましょう。」

皮膚科の医師は言う

え、軟膏だけ?

私:「内服薬は?」

医者:「早く治したい、よなぁ…。」

我儘な患者:「うん!!」

ステロイド剤を要求する患者に苦笑しつつ

「じゃ内服薬もステロイドを出しておきましょう。」

長年付き合ってると(あくまで医者と患者の関係のみ)

好きな事も言えるもんだ

とにかくこの顔を一日も早く治さないと

スッピンで 煩い学校のお母さま方達と会えやしない

穴が開くほど観察されるに違いない

しかし

なんと

3日でスッキリ治ったのだった

早!

サングラスにマスク姿でランを迎えに行ったのは

1日だけですんだ

土日を挟んだから助かったわ

もう二度とハイターを飲むのはやめてね、ラン



最後のブログを書いてから2週間が過ぎていた

その間に私はひとつ歳を取った

また一歩“死”に近づいた

今日という日

明日という日

もうどうでもよくなる時がある

「生きる屍」

相反して…

今日 髪を切った

頭が軽くなった

気分転換できたと思う

明日もまた

今日とさして変わらぬ“時間”が待っている

明日は…

ランをスクールバスに乗せたあとは

ユウを病院に連れて行く

おまけにもう一つ憂鬱なことは

ランの歯の治療だ

下校後歯科医院に連れて行かなければ…

これはもう行く前からの心構えから気合を入れなければならない

先ず

歯科医院の玄関に足を踏み入れてくれるかどうか

  だましだまし連れて行くのだ

次は待合室から治療室に行ってくれるかどうか

  受付のお姉さんに上半身を持ってもらい、私が足を持って

  「よいしょ」と持ち上げ

  治療室に運ぶしかないのだ

その次は治療台に乗ってくれるかどうか

  これはもうランと私とのバトルである

  治療台にねじ伏せた私の“勝ち”でしか治療は始まらない

おとなしく治療を受けてくれるかどうか

  歯科衛生士のお姉さんが次々とランを抑えるのだ

  頭とあごを両手で挟むお姉さん

  両肩を両手で押さえるお姉さん

  馬乗りになった私は両手でランの両手を握り

  両膝でランの腰を挟む

  私のお尻の真後ろでは両足を押さえるお姉さん

さあ、歯医者さん、やっちゃって下さい

早く、早く!

しかし

開口器をセットするのにも一苦労

ランは何度も開口器をかわすので

歯医者さんも必死だ

“肩担当”のお姉さんを叱る

“足担当”のお姉さんを叱る

足担当のお姉さんはどうやら新人らしい

両手で足を抑えているだけではダメだということを

わかってくれたらしい

体ごとランの足に覆い被さった

それでも手強いランだから

足担当の新人お姉さんは「あ!あ!」と小さく叫びながら

「ランちゃんごめん!」などと口走りながら抑えるのに必死なのだ

あああああ~

明日もこんなカンジ?

あああああああ~

ヤダ、ヤダ、ヤ~ダ!

しかし私は

ランの母親であるから

明日は歯科医院に連れて行くのだ…

(生きることに積極的ではないにしろ)
  私がねじ伏せたランの上に馬乗りになったら

ここ一週間で1kg太った

体重が増えるとどうもお肌の調子も悪くなる

顔もブサイクになるのだ

輪郭→一回り大きくなる

まぶた→腫れぼったくなり垂れ下がる→目が小さくなる

肌→ボロボロ…

でも

1kgくらいでこんなにブサイクになるもんだろうか

これって

やっぱり

“ホルモンのバランスが崩れた”→更年期障害?

認めたくないけど

肯定し始めている

主治医から車の運転を禁止されているユウの通勤の足は

私の運転する車だ

朝 ランを助手席に

ユウを後部座席に乗せて

私の“そら”は出発する

先ずはランが乗るスクールバスのバス停

ランをバスに乗せると直ぐに

ユウの会社に直行

ランの下校時は学校まで迎えに行く

ランと夕飯を済ませると

ユウからの連絡を待ってユウを迎えに行く

ユウが出向している会社の最寄の駅まで

最寄と言っても徒歩20分位はある

(普段歩かないユウにとってはいい運動だ

リハビリにもなるだろうし…)

と 言う訳で一日に約70kmは車を走らせている

車の運転は実に“ヘタ”である

とっさの判断力が鈍い

辺りに車が一台もない状況で初めて車線変更ができる、

みたいな…

駐車も真っ直ぐに止められることは滅多にない

でも!

運転は好きだ

狭い空間は自分の世界

ボリュームを上げた好きな曲が

この空間に鳴り響く

快感だ

曲はやっぱりハードロック

ヘビメタ

スラッシュ

重層なドラマティックヘビメタに

どっぷり浸っていると

爽快になる

だからヘタでも

運転は気にならない

昨日ランは午後9時前に就寝した

早く寝てくれたし、お風呂に入って…

家計簿つけて…と

しかし 午前零時…

ラン、目覚める!

ち、ちょっとぉ

まさか こらから始まるのかぁ?

 あぁ、結局午前零時から一睡もすることなかったラン

オレンジ色の豆電球一個が放つ明りの中

部屋の中を歩き周るラン

いてっ!

ふ、ふくらはぎを踏むなよ~

か、顔を蹴飛ばすなよ~

2時間置きにトイレに連れて行かなければならないし

あーもー

ビデオをつけよう

もう午前4時を回っていた

う、ううううううう…

やっと寝入ったと思ったら

なにぃ?

このビデオが気に入らない?

分かったよ

替えるよ、替えるよ、はい はい

だから、バンバン ラックを叩くのはやめてぇ

ご近所迷惑でしょうがぁ

2階で眠っているユウが起きるじゃない

あぁ朝です

新聞配達の人が郵便受けに新聞を差し込んだ音

主治医から車の“運転禁止令”を受けているのに…

私の不在をいいことに

ユウは車を運転し、本屋に雑誌を買いに行って戻って来た

(それも車の雑誌だし!)

私が先に帰宅してるなんて思いもよらなかったのだろう

ったく!!

裏切られたような、悲しい気持ちになった

虚脱感が身体全体を襲い、

座ったまま身動きひとつできなくなった

しかしながら…

こんな時にもランの“おやつタイム”には

おやつを食べさせなければならない

やっとの思いだった

こんな母に食べせられているランは…

美味しくないだろうか

いや、べつに食べられればいいんだ、ランは

私は「このままじゃ お夕飯の支度もできやしない!」と

義父に電話してしまった

「お父さん、私はユウさんをどう理解していいのかわかりません。」

「お父さんが 運転していいと許可してくだされば、

私はユウさんに 気を付けて行って来てね、と言ってあげられます。」

義父にすれば、

「何を言っとるんだ、このヨメは!?」と

言うことなんだろうけど

私のこの気持ちは治まりそうになかったから。

運転していて もしものことがあったらどうするんだ!?

ユウの身体が…、命が…

ユウが加害者になったらどうするんだ

ユウは天国に逝って

私は死ぬまで被害者に償って行かなければならないなんて

考えただけでも嫌だ

運転するな、と言っても

隠れてするんだから

どうしようもない

義父は言った

「今まで 隠れて運転して何もなかったんだから…

運転しても差し支えないのかなぁ。」

はぁ?

でも 

私はその応えを待っていたのかも知れない

許可をもらえばそれでいい

ユウはどうせヒトの言うことなんて聞かないんだから

電話を切ると

ちょっと気持ちがラクになった

私って、気が小さい割には

時として大胆な行動に出るんだなー

義父に電話することが私にとって大胆な行動なんだから

やっぱり 私は“ちっちゃいなー”