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クーラーを使えば「あせも」がなくなる、の見えない落とし穴


こんにちは。橋本です。


急にあせもが出てきたら、クーラーの効いた涼しい部屋に行けばおさまってくる。


子育てでこんな経験をするママも多いかと思います。


たしかに、あせもの原因は汗なので、クーラーを使ってなるべく汗をかかないようにすれば、あせもを予防することができます。


が、しかし。


ここにはひとつ、見えない落とし穴があります。


あせも予防:クーラー


 


クーラーに頼りがちになる気持ち


あせもは、汗の出口が詰まったまま、汗をかくことによっておこるといわれています。


汗をシャワーで流してあげれば、あせもがひどくならないというのも、そういう理由からなんですね。


夏場では、「急にあせもが出はじめた」なんてことも、子どもではよくあります。


そんな時には、クーラーの効いた涼しい部屋に移動させてあげるのも、急なあせもの広がりをストップさせる方法のひとつです。


場合によってはこれが、けっこう効果があるんですよね。


そいう経験をすると、だんだんクーラーに頼りがちになります。


子どもが汗をかくたびに、過去の「あせもがひどくなる」というイメージが頭に浮かんで、汗をかかせないように、クーラーを使い過ぎてしまう。


「まあ、あせもが広がってしまうよりはいいか」という考え方もありますが。


でも、クーラーの使い過ぎには、気づかない落とし穴があります。


それも大人以上に、赤ちゃん、子どもの場合では。


 


暑い地域と寒い地域では、働く汗腺の数が違う


クーラーの使い過ぎの落とし穴。


それは、子どもの「汗をかく機能の発達」を邪魔してしまうことです。


人間がおもに汗を出すのは、エクリン汗腺(かんせん)という皮膚に開いた穴からです。


汗は毛穴から出るものと思われがちですが、エクリン汗腺は、毛穴とはまた別にある穴。


エクリン汗腺は、全身の皮膚に約200~500万個あるといわれていますが、このうち実際に働いている汗腺は、日本人だと平均230万個だといわれています。


この「実際に働いている汗腺」のことを、能動汗腺(のうどう・かんせん)とよんでいます。


能動汗腺の数は、住んでいる地域によって大きく違います。


能動汗腺:地域での違い


寒い地域に住むロシア人が平均190万個、熱帯に住むフィリピン人では平均280万個 1)


フィリピン人はロシア人のおよそ1.5倍の汗腺が働いているんですね。


暑い地域のほうが、能動汗腺が多い傾向にあるわけです。


それもそのはずで、暑い地域では、汗をたくさんできるような体でないと、うまく体温が調節できず、オーバーヒートしてしまいます。


しかし、この能動汗腺の数は、遺伝ではなく、生後の環境によって大きく違ってくるようなのです。


 


能動汗腺の数は2歳半ごろまでに決まる


今のところ推測されているのは、


能動汗腺の数は2歳半ごろまでに、おおよそ決まってしまう 1)


ということです(能動汗腺の機能の発達は、その後も続きます)。


エクリン汗腺は、妊娠32週ごろから胎児でも確認できるようで、新生児の段階ですでに大人と同じ数だけの汗腺があります。


小さい体に同じ数だけの汗腺があるわけなので、体の表面積に対して、汗腺の密度が濃いわけです。


そうなるとたっぷり汗がかけそうですが、この段階ではまだうまく汗をかくことができません。


成長によって、体の機能も発達し、それによって汗腺がうまく働くようになってくるんですね。


で、その実際に働く汗腺、能動汗腺の数が決まるのが、だいたい2歳半ごろだとみられています。


それを裏付けるのは、次のようなデータです。


能動汗腺数:生まれた環境での違い


日本人が成長してから熱帯へ移住しても、もともと日本に住む人と能動汗腺の数は、あまり変わりません。


それに対して、熱帯地方で生まれた日本人は原住民と同様、能動汗腺があきらかに多くなります 1)


ただし、人種によっては暑い環境にさらされることによって、能動汗腺の数が増えるという報告もあります 2)


このようなデータをみるかぎりでは、汗腺の機能は遺伝というよりも、生後の環境による差が大きいとみられるわけです。


とくに、2歳半ごろまでで実際に働く汗腺の数が決まってくるといわれています。


これを考えると、クーラーの使い過ぎはあまりよくありません。


 


予防的ではなく、ほどほどにクーラーを利用する


あせもを心配するあまり、予防的にクーラーを使うのは、将来的に働く汗腺の数、本来必要であった能動汗腺の数を少なくしてしまう可能性があります。


ただ、「能動汗腺がどれだけ順調に増えているか」というのをカンタンに調べる方法はありません。


「能動汗腺の数が少ないと、どれだけ体調に影響を与えるか」も、現段階ではよくわかっていません。


なかなか目に見えないものですね。


ですが、2歳半までの小さい時期の環境で、能動汗腺の数が決まってくるというと、できることなら、少しは気をつけてあげたいところです。


だからといって、必要以上にクーラーを使うのを我慢するのも考えものです。


クーラーをうまく利用すれば、あせもの悪化を防ぐこともでき、寝苦しい熱帯夜に使えば子どももスヤスヤ気持ち良く眠ることもできます。


十分な睡眠は、子どもの順調な成長を考えると、とても重要です。


だから、クーラーを使うことが、必ずしもいけないというわけではありません。


ほどほどに利用するのが、いちばんいいのかなと思います。


クーラー:ほどほどに使う


快適さ、汗腺の発達、体調、それぞれのバランスを考えて、必要なときにうまくクーラーを利用できるのが理想です。


あせもが広がりそうなら、ためらわずにクーラーを使ってあげてくださいね。


 


 


 


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参考文献:

1) Kuno, Y, Human Perspiration, Thomas, Springfield, IL, 1956.


2) Knip AS: Acclimatization and maximum number of functioning sweat glands in Hindu and Dutch females and males. Ann Hum Biol 2(3): 261-277, 1975.