チラシ裏。

 

 

あの人からの連絡が途絶えた。

 

別にそれは悩むようなことではなくて、一度ふられて「連絡しないで欲しい」と言われた身からすると既に今の状態が幸せな状態だし、そもそも季節労働者的に一定期間忙しくなる時期があって、その間は連絡が取れなくなることがあったから(過去にも1.5か月程度連絡が途絶えたことがあった)、普通にありうる話なんだ。

 

正直それはいいの。自分が一番の人間じゃないことくらいは自覚しているから。あの人の優先順位の一番にいないことは、今の私では諦めている。

 

 

だけど。それでも少し寂しくなることがある。

 

 

いくつになっても慣れない仕事のサイクルをどうにか躱して、疲れ果てて都会の隅っこの自宅で渇いた夜を迎えると、窓の外にわずかに見える超高層ビル、スカイスクレイパーのぽつぽつ灯る航空灯が心の隙間にしみてくる。

 

そんなとき、あの人の顔と声が浮かんでくる。一番つらい、じゅくじゅくの生傷にあの人の存在が優しく浸透していく。朝が近づき、街の灯かりが1つ1つ溶けて空が白んでいくように、デコボコの心が綺麗に均されていく。

 

そのことを伝えたくなる。たった一言「寂しいけど頑張れるよ」って、もしくは「今日もあなたのことを想っているよ」って、それだけでも伝えたい。

 

 

だけどさ、それを私がやっても、きっとあの人は喜ばないじゃん。そこまでされてもなって、きっとそうじゃん。

だからさ、それはできないんだよ。好きってだけで好きって言っちゃいけない相手が、この世には居るんだよ。本当に言えるのならば、それはきっと夢のような時間なんだ。

 

 

そんなことを思っていたせいか、今日は久々に夢で会えた。いつもの満点の笑顔じゃなくて、少し切なげなオトナの顔。こんなに色気のある顔、私ホンモノでも見たことあったかな。

お互いの息遣いが聞こえるほどに身体を寄せて、ずっとこのままでいたいと思ったその刹那に目が覚めた。たったひとり、ぽつねんたたずむ新宿の部屋。私一人の暮らす部屋。

 

 

ああ、今日も届かなかった。

だからここに書くの。あなたに手を伸ばせない距離の分だけ、私の想いの丈。

 

 

次の夢でもあなたに逢いたい。

もし願わくば、昨日の続きを。一緒にさよならの続きを描きたい。