7月上旬。手術から5ヶ月、退院後9回目の外来。
どれだけ通院しているのか。自分のことながら、ちょっと引く。
入院中には色々あったけれど、先生方にも看護師さんに対しても従順に過ごした(つもり)、テーマに掲げた “効率とスピード” も華麗に達成し(気持ち的には)、誰の記憶にも残ることなく退院してから、もうすでに5ヶ月。
それなのに、“立つ鳥跡を濁さず” だったはずの私が、手術から4ヶ月経ってから、もみあげの再縫合をすることになり、 “わーわー騒いだ患者” として認定されるとは、人生何が起こるかわからないものである。
今じゃすっかり “立った後に戻ってきて跡を濁しまくっているダチョウ” になっている。
そして、記憶力ゼロと言われているダチョウ、今月も涼しい顔をして診察室に入る。
主「抜糸してから1ヶ月くらいか。その後、どうですか?」
私「また1回、傷口が開きました。」
(またかよ)
主「おお。それはよかった。まだ、たまに開いちゃったりすることもあるかもしれないけれど、徐々に開かなくなってくると思いますよ。」
(先生、その返事、何かがおかしいと思いませんか)
私「確かに今回、1回しか開かなかったです。これは、確実によくなってますね。」
(お前もお前でどうかしてるだろ)
どうかしちゃった者同士の会話のようになっているが、ここまでくると、たまに開くくらい想定内だし、大切なのは、開いたことより、開く頻度が減ってきたことにある気がしてくるから不思議なものだ。
主治医と話し合って決めたわけでもないのだが、私たちはもう“木を見て森を見ず” の逆 “森を見て木を見ない” ことにしたのだと思う。
ややこしい例えをしてしまったが、要するに、お互いいずれ良くなるだろう、という認識でいる。
また、この日は、てんかん予防の薬について、「何も症状出てないし、もう薬飲みたくないっす」と主張してみたところ、「試しに減らしてみようか。2回から1回に変更して様子を見てみましょう。」とOKが出た。これまでに数回チャレンジしてたが却下されていたので小躍りしたい気分。
ただ、また傷口が開いた事実はあるので、2週間後の予約を取って帰宅。
2週間後、7月下旬、退院後10回目の外来。
いよいよ術後の通院回数が2桁になってしまった。
この2週間、傷口は開いていない。
私「この2週間、傷口開きませんでした。」
主「おお。うん、閉じてる閉じてる。いい感じ!」
主治医が創部を見た時に言う “いい感じ” には既視感があるが気にしないことにする。
私「もうメガネに戻していいですかね。」
主「いや、それはもう少し待ってね。しかし、術後にこんなに傷口がなかなか閉じない患者さんはレアケース、っていうか僕も初めてだったから心配したよー。」
・・・・・・
・・・先生・・・
・・・ほっとしたからと言って怖いこと言うのやめてください・・・
退院後の外来で何度も「おかしいなぁ」と言ってた意味が腑に落ちた。
彼の「おかしいなぁ」は、心からの「おかしいなぁ」だったようだ。
「こんなケース初めてだな。あれ、これ、放っておいたら創部感染とかしちゃうのかな?」などと思われていたのだろうか。
スリルしかない。
しかし、てんかん予防の薬も減らしたところで何の変化もなかったので、これでしばらく通院しなくて済みそうだ。
私「じゃあ、もう通院も終わりですね!」
主「そうそう。実は来月で手術から半年経つんですよね。何度も来てもらって申し訳ないんだけど、来月は術後半年のMRIを撮りましょう。」
私「・・・・・・はい・・・・・・。」
しかも、MRIの予約が取れた日、主治医は学会で不在らしく、その2週間後、8月の下旬に診療ということに。しばらく通院がなくなると思って喜んでいたのに。あっという間に半年か。
そして、退院後にもう10回も通ったのか・・・。
「コトムさんは100ポイントたまったので、MRIが1回無料になります!」とか言ってくれたらちょっとテンション上がるんだけどな、と不遜なことを考えながら帰路についた。