退院してからは、とにかくのんびりと過ごし、基本的な生活は寝てばかりいた。入院中は頭痛などであまり眠れないまま朝を迎えても、やはりどこか気を張っていたのだろう。退院してからも頭痛はあったものの、緊張の糸が切れたようだ。食事をしたら眠る、少し活動しては眠る、を繰り返していた。
ある日、在宅勤務の夫と昼食を取り、すぐに眠っていたところ、声をかけられ目を開けると「救急車呼ぼうか?」と言われた。紙のように真っ白い顔色で眠っているので、死にかけているのかと思ったらしい。起きている時は、元々のテンションの高さと、てんかんを起こしていませんよ~のアピールもあり、何なら聞いてもらえていないのに一人喋り続けたりする割に、突然スイッチがオフになるので「その0か100かの振り幅やめて」とひどく迷惑がられた。心配をされているのはわかっているので、心配されないように振舞ってみたところ、逆に心配されるという本末転倒ぶりを発揮。ちょうどよい50の振る舞いがわからない。
【体調について】
●創部の痛み→痛みは続いておりロキソニンを購入。2回くらい服用した。痛みのため、創部のある右側を向いて眠れないので、仰向けか左向きに眠る。と言っても、しょっちゅう目覚めてしまうのは入院中と変わらず。冷えると余計痛むので、夜は術後にかぶらされていた白い角帽子を着用。退院後、2~3日経った頃から創部のかさぶたが目に見えて多くなった。
●顔の腫れ→退院後1週間くらいでほとんど戻った気がする。オタフクにさよなら。最初の頃は「かわいそうに」と同情していた夫も、オタフク後半になるとそのビジュアルが面白くて気に入っていたようで、腫れが引くにつれ残念そうな様子を見せていた。腫れが引いて残念がるとはどういうことか。
●顎の痛み→変わらず。口はまだ2センチくらいしか開かない。大口を開ける練習(大口でも3センチではあるのだが)を継続。
●内出血の痕など→どれもこれも黄色くなってきた。傷が残りやすい体質なので、いくつかは傷跡として残りそうだ。
●頭の中で鳴っている音→主治医に「そのうち治る」と言われていたが、これは確かに退院後数日で消滅。
●ふらつき→入院していた時から体が右後ろに引っ張られる感じがあったが、笑ってしまうくらいフラフラするように。ちょっとした家事でも、くるくる回転することが原因のようだ。自分の名誉のために言っておくと、私は決して “家事=くるくるまわること” と思っている訳ではない(例えば、料理をするのに、冷蔵庫から食材を取り出して、野菜を切って、鍋に入れて、などの一連の動作などで左右を向いたり振り返ったりすることです)。細かい動きが脳に与える影響が結構あるようで、ふらつきは入院していた時より感じることが多い。
●集中力の低下→とにかくぼおっとしている。集中力が続かない。それを全ててんかん予防の薬のせいにしてすごしていた。回復が遅れているとか後遺症などとは考えたくないので、諸々のミスも非礼も全てこれのせいにしていた。他人を傷つけない見事な責任転嫁のタネを見つけた。
●頭の痺れ→体ごと痺れるようになった。実はコロナの後遺症で体の痺れが酷い時期があり、治ったと思っていたが、頭の痺れと共に復活を遂げて、朝は痺れが取れるまでベッドの上でゆらゆらと体を揺らすことが日常となる。
【やったこと】
●徒歩圏内への買い物→薬局やスーパーなど日常的な買い物。退院後はしばらく、夫が基本的に在宅勤務にしてくれていたので、一緒に行ってくれた。数日に1回は少しずつ歩く。
●枕の購入→もともと薄くて柔らかい枕が好きで使っていたが、入院中は硬い枕で結構苦労した。退院後、頭が柔らかくて高さのある枕をご所望されたため、新しい枕を購入。これでだいぶ眠りやすくなった。頭と相談の上、日によって薄い枕と高さのあるふかふかの枕を使い分けている。
●ちょっとした家事→これが一番のリハビリであり回復の目安にもなる。前述したように、フルスロットルで動き回ると心配されるので、少しずつ。掃除機が入らないベッドの下などは、以前はスパイダーマンのようなポーズでクイックルワイパーをかけていたが、このポーズは頭が低くなって創部が痛むことがわかり、ベッド脇に正座をしてかけてみたりと工夫してみる。夫に見つかると心配されるが、起きているうちに諸々やりたい。こそこそやっているうちに、ただの家事が、闇家事の様相を呈してくる。
【伏線回収】
入院していた時もずっと色々励ましてくれてやりとりしていた高校時代からの親友に、主治医から頭蓋骨がぶ厚いと言われたことを伝えると、返信が。
友「そういえば私、(高校生の頃)コトムから自分は石頭だ的な話を聞いたことがあるよ!CTによって科学的にも証明されたね、おめでとう!」
・・・衝撃である・・・
私「私、石頭だって言ってたんだ。全然覚えてない。なんでそんな話になったんだろう。頭で板でも割ってた?」
友「コトム石頭説は私も呼び覚まされた記憶だからどんな流れでそういう話になったかは謎なんだけど、私もきっと何を根拠にした石頭なんだろうとは思っていたから記憶の一部になってたんだと思う。しかし、女の勘は侮れないよね、石頭説が立証されたわけだし。」
何だこの伏線回収は。
高校生の頃に勘だけで伏線を張り、エビデンスのなさで親友の記憶に食い込んだ挙句、30年くらい経った今、華麗に伏線回収を成し遂げているではないか。
それが“女の勘”なのか“野生の勘”なのか、はたまた“メスゴリラの勘”なのかは定かではないが、30年越しの伏線回収。長期連載してる漫画でもなかなか出来ないな、と謎の達成感を味わった。高校生の自分を褒めてあげたい気分になったが、そもそも何を褒めるのが正解なのかもわからないし、「30年後、脳腫瘍が見つかって開頭しますよ~」なんて知ったらその場で卒倒するんだろうな。