抜鉤での出来事が強すぎたので、それ以外の、退院前日について。

 

親族に、いつも傷口や顔の腫れの様子などの写メばかり送っていたので、朝食と朝の富士山の写メを送っておいた。
抜鉤後にCTなどを済ませて部屋に戻ってくると、父親から返信がきている。開いてみると

「富士山や朝飯はいいから顔面の状況は?明日は予定通り退院するの?
顔面の状況・・・。パワーワードである。

いや、うっかりしてた。そうだそうだ、父にとって私が珍しく爽やかな気分で朝を迎えたことなんてどうでもよいんだった。情緒なんてクソくらえ、効率とスピードが最優先だった。山だの朝飯だのを写メした私のミス。顔面の状況についての報告を怠った私のミスだ!

 

2日前、主治医から、予定通りのスケジュールで退院できそうだと言われたことを報告した際には、

「了解です。顔の腫れはどうなの?」

と返信があったな。それに対して、絶賛おたふく中の写真を送った時は

「だいぶ良くなって目が見えるね!」

ってきたし。ちゃんと心配してくれてるはず。

「目が見えるね!」については、生まれたての子犬の成長に対するコメントみたいで多少おかしいな、と引っかかったし、「顔面の状況」では、何度も言うが、私は開頭手術をしたのであって、ボクシングの試合で惨敗したわけじゃないとは思ったけど、心配はしてくれてる(はず)!

なぜならば、顔がMaxに腫れあがった写メを送った時には、母曰く、苦笑いしてたらしいし(ちなみに母親は気持ちよく笑っていた)、傷口の写真には顔をしかめてたというし。うん、心配されているな(エビデンスの弱さに泣きそうだ)。ありがとう、お父さん!

あなたのおかげで、メルヘンさの欠片もなくサムライのように無骨に育った私は、明日退院します。

 

13:30~ 文書受付へ

明日は祝日だと気が付いて調べたところ、退院手続きはできても、保険関係の書類の文書手続きは祝日は対応していないことを知り、文書受付へ行く。確定診断がでないと保険の書類も作成できないため、後日の送付依頼と支払を済ませておいた。こういった地味ながらも結構大事なことは、誰も教えてくれないので(不親切なわけではなく、説明の紙は渡されている)、元気が出てきたら、もらった資料を読み返すことが結構大切。

 

14:30~ リハビリ
最終日は、いつもの療法士さんが対応してくれる。以前、6分間でどのくらい歩けるかを確認した時には450メートルだったので、最終日の今日はその記録を塗り替えましょう、ということで550メートルを歩き、その後はエアロバイクを15分間漕ぐ。昨日はギンギンの療法士さんだったが、それ以外の日は、この方が対応してくれた。片足立ちができずにフラフラしてる時もすぐに支えてくれたし、歩いている時は無言で従者のごとく後ろを歩いてくれて、転ばないように見守ってくれた。エアロバイクを漕いでいる時などは、仕事の話をしたりして、穏やかに過ごすごとができた。ギンギンの療法士さんもリハビリに刺激を与えてくれたし、療法士さんたちには本当に感謝。気になったのは、術後最初に握力を測りに来られた方とはあの日以来お会いしておらず、最終日だからと言って再計測することもなく、握力計測があの時だけだったこと。結果、手負いのメスゴリラが爆誕しただけの測定だった気がする。

 

15:30~ シャワー

時間通りにお風呂に向かったが、まだ前の方が入っているようで出てこない。デイルームで5分間くらい待ってみたが出てこない。見かねた看護師さんが様子を見に行ってくれたが、もう出るとのことで「もう少しだけ待っててね」と言われ待ったが、10分経過しても出てこない。こうなると、お風呂で倒れてたらどうしよう、と心配になってくる。どうしたものか、と迷っていると、デイルームでタオルを抱えてぽつんと座っている私に気が付いた看護師さんが「まだ出てこないの!?」とイライラした様子でまた見に行ってくれた。入口でなんやかんやと話しているので、大丈夫そうでほっとした。と、同時に「最終日にまたお風呂のスピードチャレンジか?」とハラハラしたが、私が最後の時間帯だったようで、多少後ろ倒しになってもよいと看護師さんに言われて安堵。20分ほど遅れておっとりした雰囲気のおじい様が出てきたが、術前ならいざ知らず、さすがに術後10分間での風呂は自信がなかったので、今日、最後の利用者で本当によかった。ここで何かあったら、入院の思い出が手術からお風呂で染まってしまう。

 

夕方 主治医登場

抜鉤された後の創部を「キレイだキレイだ」と最後まで嬉しそうに眺めている。ひとしきり創部を眺めたあとは、退院前の質問コーナー。

●てんかんが起きた場合の対応はどうしたらよい?

→てんかんにも色々あって、意識を失って倒れて泡を吹くというわかりやすいものもあるが、数秒~数十秒・目を開けたまま意識が飛ぶ、手が震える、などのわかりにくいものもある

→倒れて意識を失わなければ次の外来まで放っておいていいか

→それで問題ないが、倒れた場合は救急車を呼ぶこと

●車の運転は問題ない?

→脳腫瘍の手術の後に運転してはいけないという法律はない。ということで運転は問題ない

●術前はまぶしい光やチカチカしたものを見ないようにと言われてたが、来月コンサートに行ってもいいか?

→よい

ヒャッホウ!!!

●日常生活の注意点は?

→お酒は次の診察までは控えるように。頭を打たないように。バーベルなどの重いものをもたないように。

→「バーベルを持たないように」は、主治医の様子を見る限り脳神経外科ギャグだったようだが、ちょっとよくわからなかったのでスルーしておいた。

創部の痛み、チタンの入っているあたりの痛み、顎の痛み、ふらつき、顔の腫れ、あおたんなどの変色はあるけど、あとは、退院後の外来で、ということになった。先生には「お世話になりました。本当にありがとうございました。」と感謝の気持ちを伝えた。

 

夫にも主治医から電話をかけてもらい、現在の状況などについて一通り説明してもらった。コロナ禍で面会不可となり、病院に来れないことへの配慮なのかもしれないが、術前から家族にも丁寧な対応をしてくれて本当にありがたかった。入院してわかったことだが、患者さんやその家族への説明などついては、医師によってだいぶばらつきがあるようで、そのことで患者さんが不満をぶつけているのを耳にしたこともあった。そう考えると、オペ着のままでも、ちょこちょこ様子を見に来てくれていた主治医には感謝の気持ちでいっぱいだ。

 

夜になって夫と話をしたところ、主治医は夫に対してもバーベルギャグを披露したらしいが、彼もスルーしたとのこと。先生かわいそう。そして「てんかんには、数秒間~数十秒意識が飛んでしまうタイプもあるらしい」と伝えると「それに気づくのは無理だよ。いつもそんなんじゃん」と言われた。考えてみたら、数十秒、いや、数分なら、意識が飛んだことに自分で気付く自信はないし、しばらく運転する予定もないので意識が飛ぶことで不便もない。そして「いつもそんな」状態なのであれば、それは完全に身から出た錆である。仕方ないと開き直るわけにもいかないので、退院後はできるだけ意識があるということを主張していこうと決めた。