長い夜が明けた。
しおしおのぱぁになった私は、朝早くにベッドを移されそのままCT撮影に。
担当の方々が「せえのっ」とCTの台に私を移す声に対して、心の中で“あらよっと”と合いの手を打てるくらいには復活。
その後、一般病棟に戻る。この一般病棟には入院して一泊しかしていないのに、戻ってきた感たるや。
しばらくすると、今回の手術の先生方(チームA)が登場。
頭から出てたホースのようなドレーンを抜かれ、予告なくステープラー(ホッチキス)を2発打ち込まれる。
!!!!
痛いんですけど!!!
具合悪くて保健室で寝てたら、保健の先生がきて突然ビンタしてきたくらいビックリだ!そんな経験したことないけど、例えるならそれくらいの驚きだぞ。あまりの驚きに声を失うとはこのことだ。チームAは4~5人いるんだから、誰か告げてくれ。
さらに、ICUで浸出液が漏れてガーゼで押さえていたところから、また液漏れを起こしてパジャマの襟元も濡れていることが判明し、さらにステープラー2発。
あ!!!!!!
嫌な予感したけど、やっぱりか!!!
やっぱり突然打ってくるな、お前ら!!
よかったことは、ICUで、左腕に力が入らないことで麻痺が疑われ「(ギプスみたいなもので固定されてるから)多分痺れてるだけです」の声も無視されていたが、弱々しくも動くことが判明したこと。
解放された時には、もう声もでないほどしおしおに逆戻り。
その後、夫に生還を報告。腫瘍はほとんど取れたらしいが、端の方の石灰化した部分は少し残ったということを教えてもらう。写メを撮ってみたところ、顔はぶちゃむくれて右目の上が腫れてはいたが、想定内でホッとする。
家族にも一般病棟に戻ってきた報告をしていたらあっという間にお昼ごはん。
カレーライスである。うん、全然食べられない。
チャレンジはしてみたものの、気持ち悪くて吐きそうだ。
さすがに戻ってきて一発目のカレーライスは、無理だな。
午後になり、これ以上起き上がっているのは無理と判断し、眠っていると、リハビリの療法士さん登場。明日からのリハビリに向け現在の状態を測定しましょうということで、握力検査をする。
療「では、右手から。これを握ってください」
私「はい・・・(握る)・・・」
療「・・・あれ?・・・あれ?ちょっと壊れてるのかな。あれ?ごめんなさいね。私で測ってみます・・・あれ。壊れてないかな。あれ・・・右手32キロですね・・・」
私「・・・・・・」
療「・・・じゃあ、左手でも・・・」
私「はい・・・(握る)・・・」
療「・・・左手は・・・左手も・・・29キロこえてますね・・・」
私「・・・」
療「あ、普段からクライミングとかボルダリングとかされてるんですか??」
私「いいえ」
療「じゃあ何かスポーツとかされてるんですか??」
私「・・・いいえ」
療「あ!お仕事で重いものを持つとか??」
私「・・・・・・いいえ、事務系です・・・強すぎますか?・・・」
療「いえいえそんなことは!・・・術後だから少し驚いただけです!大丈夫です!」
何が大丈夫なのだろう・・・。
あれ、私、握力強いの?
さっきまで左手の麻痺疑われてたよね。
今、頭痛いし、気持ち悪いし、体痛いし、力はいらないし、まだ熱もあるし、すごく弱ってて、ご飯だって食べられないし、声もでないし、とても“儚い”気持ちで、眠ってたよね。
なんなら、この“はかなさ”一本で今日を過ごして、あわよくば、看護師さんに「コトムさんは“はかない”から心配がつきません」なんて言ってもらうイメージで横たわってたわけですよ。
それがなんだ。ボルダリングだの普段から重いものを持ってるかだの、挙句の果てには機器の故障まで疑ってたぞ。
そういえば、手術の前夜、主治医に頭蓋骨ぶ厚いって言われたな・・・
なんなら、私、自分で太い血管をチャームポイントとして認識してた・・・
せっかくの“はかなさ”チャンスだったのに・・・
厚い頭蓋骨と太い血管、術後にはない握力・・・気分は
「“儚い”患者」あらため
「手負いのゴリラ」である。
むしゃくしゃ、ウホウホしたまま、術後の1日目は過ぎていった。