ようやく初日が終わろうとしていた・・・。

 

“スピードと効率”をテーマに掲げた入院だったが、初日からこの激しさ、この疲労感・・・不足ない相手である。

 

なんてことを考えながら、ようやくありついた夕食をのんびり食べていたところ次の刺客が登場。「コトムさん、明日の手術について説明するので別室に来てもらえますか。」と主治医にお願い(命令)される。

・・・食事中だが・・・もう何も抗うまい・・・持った箸を静かに置いて、連行。

そもそも、主治医は私が戦ったこの1日について何も知らない。そして、彼に逆らうこと、それはすなわち“スピードと効率の崩壊”に直結するとも言える。

などと、それっぽい表現をしてみたが、この人の機嫌を損ねて、何か影響があったら大変なのでビビっているだけだ。

相手もプロだから、手術で手を抜こうなんてことはないのは確かだけれど、彼も人間である。手術に関係ないこと、例えば「この患者、昨日生意気言ったから、剃毛の幅をいつもより2ミリくらい太めにしてやろう」なんて気持ちが無意識に働かないとも限らないではないか。

 

と言うことで別室に移動し、最後の確認や説明を受ける。そして、私のカットデザインはこうなるようだ。

 

主治医が決めたデザインなので、私からコメントもなく説明は無事終了し、MRIやCTの画像を見ていた時、

主治医「コトムさんは頭蓋骨がぶ厚いですね」

私「・・・ぶ厚い・・・」

主治医「そうですね。とても厚いかと言われるとなんとも言えませんが、ぶ厚いですね。だからと言って、強度があるとも限らないんですけどね♪」

私「・・・・・・」

強度があるとも限らないならなぜそれを今言った?

こんな時、何て答えるのが正解なのか。「あ、やっぱり!」「ですよね!」「マジっすか!?」「ウケる!!」「だと思った!」

・・・病院に、頭蓋骨の厚みについての想定問答集は売ってますか?

 

自分の頭蓋骨がぶ厚い事実で頭がいっぱいになったまま「アシタハヨロシクオネガイシマス」と頭を下げて部屋に戻ると、食べかけの食事はすでに下げられていた・・・。

 

色々あったな、今日は・・・

 

もう寝よう、そうだ。もう寝よう。私、疲れているしね。と自分を自分で励ましながら、洗面所で歯を磨き、部屋に戻っていると、主治医に「コトムさ~ん」と声をかけられたので立ち止まる。

すると、すたすたと歩いてきた主治医は「マークつけるの忘れてた!」と言うなり、ポケットからマジックを出して、私のおでこに何かをグリグリと描いて「じゃ、明日!」と立ち去って行った。

・・・立ったまま、顔面に何か描かれた時の想定問答集は売ってますか?

 

明日は、いよいよ手術です。