車椅子のおじさんの小説426 | 車椅子のおじさんのブログ

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 用意できたから、スタンバイして。

 スタンバイするわ。

 曲をながしてもいい?

 OK。

 私はかっこよくそう答えたわ。

 おばあちゃんがCDレコーダーのスイッチを入れたら、マドンナの曲がながれてきたわ。

 私は、自分ができる動きで振付けたダンスを踊り始めた。

 おばあちゃんは、私のダンスを撮影してくれる。

 昔、この部屋でお母ちゃんがこのかっこでやった事をやっているんだ。

 気持ちいい。

 メチャクチャ気持ちいいんだ。

 心の中で繰り返してそう叫びながら、踊っていたわ。

 あまりにも気持ちよかったから、おばあちゃんに何回も曲をかけなおしてもらって、何時間も踊り続けた。

 やっと満足を感じたら、5時間以上踊っていたわ。

 踊り終わった私におばあちゃんは、こんな言葉をかけてくれたわ。

 つかれた?

 そんなにつかれていないよ。その代わりに満足をメチャクチャ感じているわ。

 それは、よかったねえ。今の希美ちゃんは、してみたかった姿でやりたい事をやったから、キラキラと輝いていて、最高にきれいだよ。

 本当?

 本当だよ。

 うれしいわ。

 こんな希美ちゃんの動画をインターネットにアップロードしてもっと重いハンディを持っている人が見たら、この若い女の人は手にハンディを持っていても自分ができる動きでマドンナみたいな姿でダンスをしている。自分もあきらめずにやりたい事を工夫してやってみようという励みになると思うわ。

 そうなの。

 そうよ。撮影した動画をおばあちゃんが編集してあげてもいいけど、希美ちゃん自身が重いとおりに編集した方がいいと思うわ。

 自分で重いとおりに編集するわ。

 わかったわ。動画をUSBメモリに入れるわ。それをポシェットに入れてあげるわ。

 うん。

 私は、かわいくうなずいた。

 おばあちゃんが動画を入れたUSBメモリをポシェットに入れてくれたわ。

 さあ、服を着る?

 着るわ。

 下着は、どうする?

 気持ちいいから、このままで帰るわ。

 ブラは、きれいな袋に入れるね。

 おばあちゃんは、してきた青いブラをデパートのきれいな袋に入れてくれて、着てきた服を着せてくれたわ。

 そして私を家に送ってくれたわ。

 夕方に来てくれるヘルパーさんに晩ごはんの介助をしてもらった後にUSBメモリをパソコンにさしてもらったわ。

 マウスを足で捜査して、自分なりに編集して、夜中の1時前に終わったわ。

その1か月後の令和元年5月1日に、私は20歳になったわ。

 その日に、前に家の近くに住んでいる友達が教えてくれたダンス動画投稿サイトにおばあちゃんに撮影してもらった動画をアップロードしたわ。

 そうすると、アップロードした3時間後の夕方5時ぐらいから、動画の場面にいろいろな人からのコメントが入り始めてきたわ。

 その多くは「すてきですね」とか「がんばっていますね」という普通のコメントだったわ。

 その中に、この人は脳性マヒの動きをよく知っているだろうなあと思えるコメントがたった1つあった。

そのコメントの内容

 僕は福祉の仕事で日常的に脳性マヒの人の動きを見ています。

あなたの手の動きを見ていると、脳性マヒの不随は、二度とできない芸術かもしれないなあと思います。

 そのコメントを見た私は、ニッコリしたわ。