車椅子のおじさんの小説150 | 車椅子のおじさんのブログ

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五郎の1人言

 これは、80年代に中西村飛行機モーターのアリシオーネだなあ。あまりにも個性が強過ぎて売れなかったなあ。こんなメチャクチャ珍しい車にだれが乗っているだろうか?俺が若いころに、たまにこれを見かけた時にメチャクチャ個性的でいいなあと思ったもんだ。4WDTURBOか。いいグレードだな。

 そういう1人言をブツブツと言いながら五郎はエレベーターの方に向かった。

 エレベーターで最上階に上がった。

 最上階に上がった五郎は、ベンチに座ってリュックサックから出したノートパソコンで旅で知り会った人たちへの正月のあいさつのメールを書きながら、初日の出を待っていた。

 7時過ぎに、初日の出を迎えた。

五郎の1人言

 アッ、平成40年が終わって、平成41年が始まったのか。今年も自由にするか。

 初日の出を見た五郎は、館内案内図でレストラン街を探して、エレベーターでレストラン街がある階が下がっていった。

 その階に着いた五郎は、和風越後屋という和食の店で期間限定メニューのイワシのつみれ入り雑煮を食べた。

 雑煮を食べた五郎は、こんな1人言を言った。

五郎の1人言

 今日は元日だから、相棒のスペシャルがあるなあ。ちょっといい所に泊まって、相棒第27シリーズ元日スペシャルをゆったりと見るか。

 五郎はこんな1人言を言いながら、越後屋を出て、ゆっくりとエレベーターホールに向かった。

 それで、エレベーターの近くのトイレに行ってから、ジャパンを止めてある地下駐車場にエレベーターで下がっていった。

 エレベーターの中で、五郎がズボンのポケットに入れてあった懐中時計を取り出して見たら、時計の針が午前10時半過ぎをさしていた。

 エレベーターを降りた五郎はゆっくりとジャパンを止めてある所に向かった。

 ジャパンに近づいていったら、となりに止まっているアリシオーネからイケメンの若者が降りて、五郎に声をかけた。

 五郎のお兄ちゃん、久しぶりだね。

 やけになれなれしいやつだなあ。待てよ。俺はおまえの事を知らないのに、どうしておまえは俺の名前を知っているんだ?俺の脳には、おまえの記録はまったくないよ。

 そう言った五郎は、ふしぎそうな目でイケメンの若者をにやんだ。

 まだわからない?

 わからん。おまえはだれだ?

 18年前にメチャクチャかっこいいジャパンを見て、何も言えなかった時はまだ5歳だったから、一発でわかえと言うのはやっぱり無理か。

 あっ、わかった。

 やっとわかってくれたか。お兄ちゃん。

 希望くんでしょう。

 当たり。

 当たったか。

 お兄ちゃんはあまり変わっていないね。

 まだお兄ちゃんと呼んでくれるのか。うれしい。希望くんは、かわいい男の子からメチャクチャイケメンにフルモデルチェンジしたね。

 それって、お兄ちゃん独特なほめ方だね。ありがとうね。

 となりに止まっているジャパンが俺の車だとよくわかったなあ。

 わかるさ。80年代の車なんかメチャクチャ珍しいし、スマホに18年前にとってくれたジャパンの正面の写真を入れていて、それでナンバーを確認して、お兄ちゃんが帰ってくるまで待つ事にしたさ。

 そんな写真をとったっけ?

 とってくれたよ。

 そうか。その写真を見せてくれる。

 いいよ。

 希望くんは、アリシオーネのダッシュボードの上に置いてあったスマホを取り出して、その写真を五郎に見せてあげた。

 本当だ。ナンバーがしっかり写っている。

 お母ちゃんがこの写真を大切にとっていてくれて、時々見せてくれたさ。

 希望くんが好きな車の写真を大切にとっていてくれるお母さんはメチャクチャいいお母さんだね。

 そう思います。

 話が変わるけど、元日の朝に地下駐車場で長い間立ち話する俺たちはなんとなくへんだとは思わないか?

 そう言えば、へんだなあ。

 ここを出て、ゆっくりと話せる所に行こうか?

 うん、そうしょう。

 その地下駐車場から出て、近くの南部百貨店の無料の立体駐車場に車を止めた。


                        つづく