車椅子のおじさんの小説148 | 車椅子のおじさんのブログ

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さとみさん くまのおにいちゃんのおようふくがすごくかわいいなあ。

 その日の鉄三郎の姿は、上は江戸川コナンが小さい赤いサイドカーに乗っている絵か描いてある黒いセーターとビニールレザーのワインレッドのベストで、下はワインレッドのビニールレザーパンツと黒いベルトと赤いソックスと光沢がある黒いショートブーツ姿だった。

鉄三郎 今日もお洋服がかわいいと言ってくれて、ありがとうね。コナンが好きなの?

さとみさん すき。

正美さん 毎週土曜日に見ているね。

 それを聞いていた昌は、心の中でこんな事をブツブツと言っていた。

昌の心の言葉

 鉄のやつ、さとみさんに着ている物がかわいいと言われて、お兄ちゃんになったなあ。俺もかわいい物を買って、今日着ていこうかなあと思っていたけど、どうしてもかわいい物を着る勇気が出なかったから普通の物を着てきたけど、さとみさんの目には俺はおじさんに見えるだろう。

鉄三郎 コナンの絵をよく見てみたい?

さとみさん うん、みたい。

鉄三郎 それじゃ、ベストを脱ぐか。

 鉄三郎はそう言って、自力でベストを脱いだ。

さとみさん ワー、かわいい。

 そう話していると、時計の針が11時半前をさしていた。

正美さん おそいから、寝る?

さとみさん うん。

正美さん それじゃ、明日何を着るかを教えてくれる。

鉄三郎 さとみさんは、明日の準備をするみたいから、俺たちは行こうか。

昌 行こう。

正美さん さっき、お風呂から帰る時に部屋の前でおじいちゃんに会って、バーに行くから鉄三郎さんたちに部屋の鍵をわたしてくれると言われました。

 昌は、鉄三郎を車椅子に乗せた。

 部屋の鍵をわたされた鉄三郎たちは、姉妹たちの部屋から出ていった。

 その後、エレベーターホールに置いてある自販機でウーロン茶を買って、猫座山さんの部屋に入った。

 大きい窓の前に置いてあるテーブルと椅子一脚をどかして、窓の前に鉄三郎の車椅子を横付けて、その前に置いたもう一脚の椅子に昌が座った。

 窓から下の景色を見た鉄三郎がこんな事を言った。

 下は真っ白っけっけっ。明日、三重方面に取材に行く予定だけど、これじゃ無理だなあ。

 明日の朝に様子を見てから、相手に連絡すればいいさ。

 さとみさんは、きれいな花を咲かせていたね。

 鉄、なかなかロマンチックな言い方じゃないか。

 まあね。

 1つ心配な事があるけどさ。

 何?

 前に、鉄が脳性マヒの緊張が強い人は早く老けてしまうという説があると言ったでしょう。さとみさんも緊張が強いみたいから、せっかくお姉さんみたいにきれいになれたのに、強い緊張で早く老けてしまうじゃないかと心配しているよ。

 説はあくまでも説だ。同級生や先輩で何人か緊張が強い人がいて、全員ではないけどほとんどの人が若々しいから、さとみさんはいつまでもきれいでいたいという思いをだきしめているはずから、きっと老けないさ。それに、正美さんなどの家族が、さとみがいつまでもきれいでいられるように願っているから、まあ大丈夫だろう。

 なるほどね。

 鉄三郎たちはそう話していて、ウーロン茶を飲みながら21世紀の白い名古屋を見ていた。

                   完