車椅子のおじさんの小説62 | 車椅子のおじさんのブログ

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弁護士からの電話がかかる

 静岡に来てから、5日目の夜、ビジネスホテルの和室で昌は上向きに手を上で組んでその上に頭を乗せて、俺は下向きで値ごろがって、こんな事を話した。

 今日まで何もつかえないねと言いながら、鉄三郎はため息をついた。

 そうだなあ。静岡で聞き込みをすれば何をつかめるだろうと思っていたけど、あまかったなあ。

 せめて、とらさんに会って、直接どうきを聞いてみたいなあと思う。

 それは絶対に無理だろう。家族や弁護士は面会させてくれるけど、俺たちみたいな物書きは面会させてくれないと思う。

 昌に言わなくても、それはわかっているよ。これからどうする?今日時点で小糸川さんの話以上の事はつかめていないし、そらそろ何を書かないとやばいから、このネタをあきらめて別のネタを探すか?

 俺はいいけど、おまえと同じ脳性マヒの人がどうしてこんな事件をおこしたかを知りたいだろう。

 うん、知りたい。

 そうたったら、もうちょっと探っていこう。

 うん。

 その時に、昌の携帯がなった。

昌は、立ち上がってテーブルに置いてあった携帯をとって、ディスプレイを見た。

 なんだ、この番号は、見覚えがない番号だなあと言いながら、電話に出た。

 もしもし、どちらさまですか。

 40代後半の男の声が聞こえてきた。

 私は、弁護士の八林という者です。そちらは、テツアンドマサルのお二人ですか?

 そうです。僕たちに何の用でしょうか?

 今、私は母親を殺してしまった重度障害者の方の国選弁護人を引き受けていまして、事件発生以来、毎日面会に行っています。いろいろな事がわかってきました、だが、大変と特殊な事件で、事情を知らないマスコミが想像で書いて放蕩するでしょう。その報道かこれから開かれる裁判への影響が心配です。重度障害者の方の事をよくご存知でいるライターの方に取材して事実だけを書いてもらえたら裁判にいい結果を齎すだろうと思いまして、インターネットでそんなライターの方を探していたら、あなたたちのホームページを見つけまして、連絡を差し上げました。私の依頼を引き受けていただけるでしょうか?

 その方は、とらさんこと斉藤氏ですか?

 そうです。よくご存知で。

 ちょうど取材していました。相棒に聞くから、ちょっとお待ちください。

 鉄、途中からスピーカー機能に切り替えたから事情がわかるだう。どうだ。

 もちろんOKよ。

 ふたたび昌は八林さんからの電話に出た。

 八林さん、ご依頼を引き受けさせていただきます。

 ありがとうございます。

 こうして俺たちの取材は、新しい転回を迎えるようになった。