ジャパンに希望くんを乗せる
7月の初めごろ、みちのく市役所からこんなメールを来た。
そのメールの内容
みちのく市役所災害復興課の物です。
3月の地震の津波で、パチンコ天下倒立堂の立体駐車場の屋上に
車で避難されて、そのまま車を残して自衛隊の大型ヘリで救出された方、7月15日に大型クレーンであなたのお車を降ろしますから、引き取りに来てください。
それを読んだ五郎は、1人言を言った。
その時の五郎の1人言
やった。久しぶりに旅の相棒に会えるぞ。
その1週間後、五郎はジャパンを引き取りに行った。
オヤジさんに天下倒立堂の立体駐車場まで送ってもらった五郎が着いた時に大型クレーンが来て、準備していた。
タクシー運転手のおじさんの重雄さんがタクシーを引き取りに来ていた。
よっ、五郎くん。
重雄さん、こんにちは。
旅の相棒を引き取りに来たか?
そうですけど、3月からずっとそのままでしていたから、エンジンがかがりますかね?
エンジン自体は大丈夫だと思うけど、バッテリーが確立に上がっているだろう。
そうですか。
いよいよ立体駐車場に残された車たちを降ろす作業が始まった。まず、ヘリで充電用のバッテリーを上げて、バッテリーがあがってしまった車に充電して、クレーンのアームが届く階まで移動させた。
ジャパンは、屋上の1階した階に止めてあったから、1番目に降ろしてもらう事になった。
その作業をやる自衛隊員がかけてあったカバーを外したジャパンに乗り込んで、エンジンをかけてみた。
やっぱりバッテリーがあがっていたみたいで、ぜんぜんかがなかったから、充電した。
その後、移動されてクレーンのアームにつるされて、降ろされた。
久しぶりにジャパンを目にした五郎の一言
オー、相棒。久しぶり。
五郎はそう言いながら、ジャパンに頬ずりした。
五郎くん、久しぶりに相棒に会えて、よかったね。
うん。
次の日、希望くんのお母さんにメールでジャパンが戻ってきたから、希望くんを乗せに行く事を言った。
その30分後、その返事が来た。
その返事の内容
五郎さん、お久しぶりです。
息子は、震災前まで通っていた幼稚園が被災して閉演してしまったから、幼稚園が変わりました。だけど、その幼稚園でいじめられて、2.3日前から休んでいます。
五郎さんの車に乗せてもらったら、息子は元気が出ると思います。
それを読んだ五郎は、すぐにメールを送った。
そのメールの内容
都合がよかったら、明日行きますけど、とうですか?
その10分後、「息子も私も都合がいいです」という内容のメールが来た。
五郎は、次の日に希望くんの家族が住んでいる仮設住宅に行った。
希望くんの家の前に立った五郎は、ノックした。
五郎 こんにちは。
お母さんが引き戸を開けて、五郎を出迎えくれた。
出迎えてくれたお母さん 五郎さん、こんにちは。
五郎 希望くんはいますか?
お母さん 奥の部屋にいますけど、あまり元気がないです。
五郎 そうですか。
そうしたら、奥の部屋から息子を心配で仕事を休んだお父さんが出てきた。
お父さん こんにちは。
五郎 お父さん、こんにちは。
お父さん 今日は、わが息子のために来てくださって、ありがとうございます。
五郎 いや、俺は希望くんと男と男の約束をしたわけだから、お父さんたちからのお礼は、いらないです。
お父さん そうですね。
お母さん どうぞお上がりなって、息子に会ってください。
五郎 わかりました。
五郎は、希望くんの家に上がって、希望くんがいる部屋に膝歩きで行った。
希望くん、こんにちは。
お兄ちゃん。
お母さんから聞いたよ。幼稚園でいじられたたって。俺の車に乗って、元気を出しな。
希望くんは、ほんのちょっと元気が出して、うんとうなづいた。
五郎と希望くんの家族は、家からジャパンを止めている所に向かった。
2分ぐらいで、ジャパンを止めている路地に着いた。
ジャパンを見た希望くんは、こんな反応をした。
希望くん かっ、かっ、かっ。
お母さん かっこいいね。
お母さんは、希望くんが言いたい事を代弁した。
五郎 言葉にならないほどにかっこいいか。
希望くんは、元気よくうんとうなづいた。
五郎 さっきよりも元気が出てきたなあ。
希望くん うん
五郎 この車で行きたい所につれていってあげるよ。どっかに行きたい所があったら、言ってね。
希望くん 遊園地。
五郎 遊園地か。よし、行こう。車を出すから、ちょっと待ってくれる。出したら、乗ってくれる。
希望くん うん。
お母さん 私たちは車で五郎さんの車の後をついていくと思います。
五郎 わかりました。
その後、五郎はジャパンを前に出して、希望くんを乗せて、カーナビで検索して、見つけた遊園地に向かった。
東北道を1時間ぐらい走って、遊園地に着いた。
希望くん 車を降りたら、お写真をとってくれる?
五郎 いいよ。この車との写真をとってもらいたいでしょう。
希望くん ワーイ。ワーイ。
希望くんは、そんなふうに喜んだ。
写真を5.6枚とってあげた。
五郎 写真をお母さんの携帯に送ったよ。
お母さん ありがとうは。
希望くんは、かわいい笑顔でありがとうねと言った。
五郎と希望くんは、夕方まで楽しんだ。
希望くんの両親は、遠くから見守っていた。
夕方、遊園地の中の広場のベンチに座った五郎は希望くんにこんな話をした。
ねえ、希望くん。
なあーに、お兄ちゃん。
津波でおうちを流されて、変わった幼稚園でいじめられて、つらい事がたくさんあったね。
五郎はそう言いながら、希望くんをやさしくだいてあげた。
希望くんは、ちょっと涙を流しながら。うんとうなづいた。
希望くんはまだ小さいからわからないかもしれないけど、大きくなったらわかるようになるから、よく聞いてね。
聞くよ。
これから希望くんが生きていくと、悲しい事やつらい事がたくさんたくさんあるかもしれないけど、何か楽しい事を考えていると、いい事があると思うよ。だから、いつも楽しい事を考えな。この話をわかったかなあ?
わかんない。
そうか。やっぱりわからなかったか。大きくなったら、今の話を思い出してくれる。
うん。
さあ、暗くなってきたから帰ろうか。
うん、帰ろう。
2人は、帰っていった。
次の日、希望くんは幼稚園に行った。他の子にジャパンとの写真を見せたら、「かっこいい」と言われて、何人か車好きな友達ができたそうだ。
つづく