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Kou

音楽雑感と読書感想を主に、初老の日々に徒然に。
ブログタイトル『氷雨月のスケッチ』は、はっぴいえんどの同名曲から拝借しました。

風街ろまん

 

 

NHK BSプレミアムのドキュメンタリー番組、名盤ドキュメント はっぴいえんど『風街ろまん』~"日本語ロックの金字塔"はどう生まれたのか?~

 

この番組は三年前に放送されたもの。はっぴいえんど元メンバー三人が集まって自らを語った、初のテレビ番組とされる。伝説のバンドはっぴいえんどについては、これまでも幾多の本が世に出ていて、今はネットにも情報があふれている。それでも、画期的な当番組について語られることは少ないようだ。大瀧詠一を亡くしてしまった今、このままでは細野晴臣らの貴重な証言すら消えかねない。

 

そこで僭越ながら、彼らの語りをそのまま文字化して、ネットにあげることにした。この試みが成功しているかわからない。しかしあなたがはっぴいえんどファンであるならば、ちょっとは価値があるはずだ。というか、結構大変だったんだから (-_-;)、読んでもらいたいと思う・・・

 

さて番組テーマはタイトルの通り、1971年に発表されたアルバム『風街ろまん』である。いうまでもなく、はっぴいえんどの最高傑作とされる作品だ。レコード会社の倉庫から発掘されたという、そのマスターテープを三人が一堂に会して聴きいり、制作当時を振りかえる構成となっている。

 

また別収録として、俳優の佐野史郎とミュージシャンの高田漣がはっぴいえんどを語り合い、さらには俳優星野源らも、別撮りでコメントを寄せている。彼らの、プロの立場を離れた一ファンとしての、熱き思いがとても興味深い。

 

 

 

 

 

名盤ドキュメント ロック少年

 

 

 

はっぴいえんどが結成される前、ビートルズに触発され日本ではグループサウンズが続々誕生していた。しかし松本隆らロック少年は、それらに満足できないでいた。

 

鈴木茂 グループサウンズはつまらないと思っていた。歌謡曲の延長でしかない。

松本隆 電気楽器は使ってるけれども、やってることはロックではない。

鈴木茂 フォークの人たちは、メロディはいいけれどリズムがつまんない。

 

 

 

 

 

 

 

 

名盤ドキュメント 『抱きしめたい』

 

 

佐野史郎 『抱きしめたい』の魅力はイントロだよね。

高田漣 拍が全く分かんなくなる。細野さんから聞いたが、当時は裏の拍から入るのが仲間内でのブームだったらしい。どこが頭か、歌が始まるまでぎりぎりまでわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

名盤ドキュメント 『はいからはくち』

 

 

星野源 ソウルフルだし、好きな音が詰まっていて、繰り返し聴いてしまう。自分の好きな音がここに詰まっている。最初の和太鼓みたいな音もそうだし。録音の現場に行って、マイキング(マイクの位置)を見てみたい。

 

高田 イントロがおもしろい。

佐野 相撲の太鼓。「日本語のロックをやるには、日本語の文化的背景をちゃんと体に叩き込まないとダメなんだ。それを覚悟して聴け」(と、聴き手に暗に宣言している)

 

 

ー 松本隆のドラムトラックが流れる -

松本 けっこう雑に演奏している(笑)。どんな曲かわからず演奏しているから。(曲を)知っているのは(作曲した)大瀧さんだけ。大瀧さんはアイデアマン。いろんなアイデアを練ってきて、アレンジもガラッと変わる。お互いに試しあうところがある。毎日が武蔵と小次郎。

鈴木 (普段から)お互いの音楽的な情報を交換している。それがベーシックにあるから、あんまり言葉がなくても通じ合えた。

しかし、2chと3chに同じドラムソロが入っている。それもどうやら同じ音らしい。なぜなのか、大瀧詠一がおこなったこの編集意図を、松本隆と鈴木茂があれこれ探るが、ついにわからなかった。

 

松本 『はいからはくち』とは、ひとつは、ハイカラな白痴。海外のモノマネばっかり。先を争ってマネばかりしている人たちがいる。自虐的な批判をやりたいと思った。同時にすごく苦しい。自分の内臓の肺から血を吐くような思いをして僕は詞を書いているのを、ダブルミーニングにした。

細野晴臣 はっぴいえんどってのは、大瀧詠一のポップが柱。

 

 

 

 

 

 

 

 

名盤ドキュメント 『夏なんです』

 

 

佐野 夏休みさぁ、暑い中、喫茶店に行ってこれがかかってると、人生の中で一番幸せな一瞬のひとつに入るかもしれないなぁ。

 

星野 すごく変な音だなぁと思うんです。その感じが、コード進行と雑味みたいな。これが日本の夏の雑味とリンクしている感じ。夏~!、って感じる曲だから、(暑い!って感じて)辛いです、聴いてて(笑)

 

涼しさを感じる人もいれば、暑さを感じる人もいる。それぞれの夏を感じる、独特の空気感はどこから生まれるのか。

 

高田 M7が二個続く、独特のフワーっとした、帰結感のないまま進んでいく感じ。そんないろんなコードを使わないんだけれど、うっすら転調(を感じさせるコード)を織り交ぜて、風景がぼやける。

 

星野 着地してない感じ。宙に浮いている感じ。

 

 

『夏なんです』のイントロを、細野はあるバンドに影響を受けて作った。

高田 たぶん、ファンの間では有名な、モービー・グレープの・・・

佐野 (すかさず)『He』だよね。

 

ー 『He』が流れる -

松本 あ、ホントだ。知らなかった。

細野 (影響されてたのを)知らなかった?

松本 鈴木 イントロだけ似てるね。

細野 (影響されて作ったのを)別に隠しちゃいないよ。常にバッファロースプリングフィールドと、モービー・グレイブという、ふたつのグループのサウンドが頭にあった。

 

バッファロースプリングフィールドの影響とは。

ー 『For what it's worth』 が流れる -

 

細野 (嘆息するように) いい曲だぁ。いまだに影響されてるなぁ。

Q(=番組側の質問) バッファロースプリングフィールドの特徴ってのは?

細野 そんなの、わかんない。スティーブン・スティルって人が、『分析するな』(って言ってた)。sonething elth(他の何か)(説明ができない)っていうところが、一番おもしろい。

 

説明できない音楽の魅力。

 

 フィンガーピッキング、ですよね。

細野 そうです。(僕が)高校の頃に、出てきたボブ・ディランがフィンガーピッキングでやってた。最初スリーフィンガーだった。そのうち二本指で弾けるようになって、ピックはそれ以来、使ったことがない。茂もフィンガーピッキングで、エレキギターやってるよね?

鈴木 ピックのニュアンスが、当然違ってくる。弦をはじくような弾き方ができるから。

 

鈴木 ピックじゃないね。

細野 ピックじゃできない。

鈴木 長谷川きよしさんに、あなた、指でひいてるでしょ、って言われたことがあって。

細野 すごい、耳がいいんだ。

 

 

ー 松本のドラムが流れる -

松本 ここだ。(膝を軽くたたきながら)、ツッツタタッ。普通はタン、なんだけれど、タタッ、ってやってる。あれが粘る。

細野 かっこいいね。

松本 (自分で)かっこいいね。これをさ、(細野を指さしながら)、松本これやれ、って要求するわけ。

 

もういちど、ドラムが流れる。

 

細野 やってるね。

松本 隠し味だね。

細野 付点っていうキックのリズムのなんだけど、それは、ストットンっていう。

(松本が、それを膝で実演)

鈴木 シンコペーションだね。

細野 (松本が)足つりながら、やってた(笑)

松本 だって、すごい速いことやらかすからさぁ(笑)

 

 

低い声に悩み、曲が作れないでいた細野が、なぜ作曲できるようになったのか。

 

ー 没になった『夏なんです』のリハーサルテイクが流れ出す -

 

細野 ハハ、笑っちゃう。

細野 全然違う歌(笑)

松本 メロディは似てるよね。

細野 似てない。

鈴木、松本 似てるよ、コード進行が違うだけで。

細野 (自分が作った歌なのに)これもいい。これいいなぁ。いやぁこれ知らなかったなぁ。なんで知らないんだぁ。なんで教えてくれないの?っていうか、どこで見つけた?(と、自分が忘れているだけなのに、興奮を隠しきれない様子)

 

 

リハーサル版は、サビの声域が高い。つまり細野は低い声で歌えるように作曲し直した。細野にきっかけを与えたのは、ジェイムス・テイラーだった。

 

細野 ジェイムス・テイラーの音域が僕にピッタリ。あと、フィンガーピッキングのギブソンの音とか。『これだ!』ってのがあったんです。

松本 細野さんちに呼び出されて、ジェイムス・テイラーをはじめて聴かされて、『こういう感じでやりたいんだ。これだったら僕の声にも合うと思う』って。

 

 

 

 

 

 

 

 

名盤ドキュメント 『花いちもんめ』

 

 

佐野 茂さん、初めて作った曲でしょ。

高田 信じられない。茂さんはバンドの中でも一番年下で、ギターの感じとかみていると、ビートルズにおけるジョージ・ハリスンみたいな。

佐野 コーラスも、なんか美しい。

 

鈴木 ジョージ・ハリスンのギターはとても好きです。アドリブで弾きまくるというよりも、メロディを考えて、それを完成させていくという形の方が好き。この曲で初めてボーカルをやったんだけど、不安を感じながらやってた覚えがあるけど。

 

 

鈴木にとって、自分の曲の録音は初めての経験。コーラスアレンジに悩み、大瀧に頼った。

鈴木 (出来上がりを知って)とてもビックリした。もっと簡単なメロディラインを考えてくるかと思ったら、1番2番3番とが微妙にメロディが違っていて。二番が裏声になってたり、いろいろ変えてますよね。とっても力を入れて考えてくれたんだなぁと、感謝したんですけどね。

 

 

鈴木茂のデビューについて。

細野 いい曲作ってくれたんだなぁ、と思いましたよ。歌もちゃんと歌ってくれ、初々しい。(鈴木は当時19歳) 今思えば、子供に近い年齢ですからね。はっぴいえんどにちゃんと貢献してくれた。

 

第三の男、鈴木茂のデビューで、全員が曲を作り歌う、理想のバンドが実現した。

しかしこの曲には、その逆の意味も。

 

右手の烟突は
黄色い煙を吐き
左手の烟突は
紅い煙を吐く
みんな妙に怒りっぽいみたい

 

松本 大瀧さん(左手の烟突)と細野さん(右手の烟突)が、仲が悪くなっちゃって困っている松本隆がいる。(言い終わると、うつむく松本。つらかった当時を思い出したのかのように)

 だから、鈴木茂に託した?

松本 うん、それはあるでしょうね。じつはこれは、解散する頃のはっぴいえんどのみんなの気持ちがバラバラになって、歌う人たちはソロになりたくてしょうがない(という気持ちがあった)

 

風街ろまんの録音中、大手レコード会社から、大瀧のソロデビューが決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

名盤ドキュメント 『風をあつめて』

 

 

細野 大好きだったバッファロー・スプリングフィールドも全員が歌を作って、全員が歌っていた。ひとりひとりの才能が集まるのがバンドだ、そういう時代が来ていた。

 

しかし、細野はなかなか曲ができず、録音に入れなかった。問題は細野の声。通常、ロックボーカリストの声は高音。高いほうがシャウトしやすく、楽器の重低音にも埋もれない。しかし細野の声域は低かった。

 

細野 僕の人生はベース。声は低い、低域で生きている。高い声が出ない。特に歌ですね。歌が歌えなくて。高い声の歌は歌いにくい。低い声の歌にするといい曲にならない。

 

 

『手紙』という、ゆでめんの時に没にした曲がスタジオに流れる。すると細野が両耳に指を入れ、「もういい」と苦笑しながら音楽を止める。低音しか声を出せない細野が無理矢理、高音域のパートがあるこの曲を作ったのだが、あまりの不出来に自ら没にしたという、いわくつきの歌だった。恥ずかしい過去の再現に、細野はいたたまれなくなったのだ。

 

細野 『手紙』は、もう何もかも嫌い。悩みのかたまりだよ、これ。バンドっぽい声を出そうと、無理して高いんだよ。『手紙』にある「お袋」というフレーズは、普段言わない。抵抗があった。

松本 細野さんが、『手紙』は没にすると言ってくれたので、ホッとした(笑)

 

 

ただし、『手紙』には「風を集めて」というフレーズがあった。これだけは捨てられず、『風をあつめて』に繋がった。

 

細野 風をあつめて、のフレーズだけは捨てられなかった。

 

 

松本は、『手紙』のテーマだった、帰宅を急ぐ庶民的な風景を描いた歌詞を、書き換えた。

 

松本が朗読する。

街のはずれの
背のびした路次を 散歩してたら
汚点だらけの 靄(もや)ごしに
起きぬけの路面電車が
海を渡るのが 見えたんです
それで ぼくも
風をあつめて 風をあつめて 風をあつめて
蒼空を翔けたいんです
蒼空を

 

細野 説明なんかいらなかったです。同じ風景を見てたんで。東京の風が吹いている世界観、というのが非常に音楽的だと思いました。

 

路面電車が海を渡る、という幻想的な風景について。

 

松本 子供たちが集まって鬼ごっこをしたり、野球をしたりする広場があって、そこにマンションが建ったり。ビルが建ったりする前の広場はどこに行ったかというと、子供たちの記憶に残っている。その記憶の街をパノラマみたいにいっぱい集めたら、ひとつの巨大な架空の街ができる。それが『風街』

 

『風街』と呼ぶ、松本の原風景。それが大きく変わるのが、東京オリンピックだったという。

 

松本 まず路面電車がなくなった。これが一番大きいかな。あのゆったり走る感じがよかった。

細野 よく松本君と乗ったりしてたんですよ。そこから広がる赤坂見附の路線の複雑さとか、乗るたびにふたりで『すごいね』って言ってたんです。その景色がもうないんで。

 

松本の路面電車への思いは、アルバムジャケットにもうかがえる。ジャケットの内側いっぱいに描かれた都電のイラスト。当時メンバーの写真を撮影した、細野の大学の同級生で写真家の野上眞宏は、松本のこだわりを覚えていた。

 

野上眞宏

松本君がコンセプトを考えて、ジャケットを作ってた。都電の絵を表紙にしたいと頼みに行ったら、漫画家の宮内一彦さんが、顔のアップでいこうよ、って。でもそれでも食い下がって、どうしても都電の絵が欲しいんです、って言ったら、中ジャケに都電の絵を描いてくれたんですね。

 

さらにオリンピックの道路拡張で、松本の生家は道路になった。

 

松本 青山のキラー通り。別名オリンピック道路。オリンピックでほとんど強制立ち退きだから、奪われたって感じがすごく強かった。

 

オリンピックは道路や街並みだけでなく、人の繋がりも変えた。

 

松本 クラス会というのがないよね。会いたいなぁと思うんだけど、みんな土地を相続できないもんだから、売るよね。どっか行っちゃう。連絡取れなくなっちゃう。心の何割かは喪失している。

細野 その当時の東京が好きなんですよね。春になれば、春のにおいがする風が来たり、あっ秋だ、冬だ、とか、全部わかるんですよね。風が運んでくるんで。今はもうわかんないです。

 

 

2020年、東京オリンピック招致決定。

東京はさらに変わるんだろうか。

 

松本 変わるよ。まぁ(前回の)東京オリンピックみたいな、ああいう良さもないだろうね、きっと。日本中が高揚するような。あの時、だからさぁ、日本が下を向くなんてさぁ、想像もつかなかった。

細野 いいこともあったんだろうけど、弊害もある。(次回の)20年に、反省もなしにやっていいんだろうか、って僕の場合は。ですから、今こそ、その歌詞が響いてくるんですよ、僕にとって。

 

『夏なんです』で、自分なりの曲作りに開眼した細野は次々録音、『暗闇坂むささび変化』『あしたてんきになあれ』。しかし『風をあつめて』の作曲には苦戦していた。

 

細野 なんでってかというと、すごく難しい詞なのよ。『通り抜けてたら 伽藍とした 防波堤ごしに』(これに)メロディ、どうやってつけんの(笑)(と、松本を見る)

松本 上手に乗せてるよ、すごく(と、細野を褒める)

細野 苦し紛れにつくった。

松本 細野さんしか乗せられないんだよ(と、さらに褒める)
細野 だって、レコーディングの日まで(曲が)できてなかった。

 

(録音予定日の)9月6日、曲ができていないにも関わらず、スタジオに入った細野。

 

星野  ぼそぼそっとした歌い方なのに、なんてカッコいいんだろう。自分が生まれる前の音源ですけど、古い感じがしなかった。

 

高田 (ファンは)びっくりしたはずですよね。はっぴいえんどは大瀧さんの声の印象が強いバンドだから。

佐野 細野さんのボーカルとしては一曲目だからね。

 

松本 風に吹かれてっていうと、すごい受け身になる。あつめるっていうのは、ものすごく能動的なこと。このまま空中を飛べるんじゃないかみたいな瞬間がふっと来る。とってもみんなが憧れていることなんじゃないか。実際の生活とか人生とか、どろどろの中でみんな生きているわけじゃない。もっとさっぱりしたところへ行きたいわけ。風ってのは、そういうところへ運んでくれる。それを歌にしてあげたい。

 

星野 あらためてクレジットを見たら、風をあつめてはほぼ細野さんのソロなんだてことがわかって、楽器はほとんど細野さんで、あとは松本さんがドラムをたたいているだけ。

Q なぜだと思いますか?

星野 なんでだろう? え? それって悲しい話ですか?(笑)

 

松本 曲出来てなくて。レコーディングの直前に、細野さんが、今でもはっきり映像で覚えているんだけれど、壁んところにもたれて、しゃがんで、立膝でさぁ、生ギターもって、『松本、聴いてくれや、曲が出来たから』って。これから録音するのに悠長な話だな(笑)。茂も大瀧さんもいないし。あとのふたりは?って訊いたら、呼んでないって(笑)。で、聴いたら、めちゃくちゃいい曲だった。それですぐ録音しよう。アコギとドラムスで(笑)

 

(やっとできた曲の)録音は、まずアコギとドラムスを収録した。

ー そのトラックが流れる ー

 

細野 (録音を聴き) 緊張するなぁ。思い出してきちゃった。デモを作るみたいな状況だったね。

松本 すべてがぶっつけ本番。

細野 練習なし。

 

続いてもう一本のギターも細野が演奏して収録した。

 

Q: このときに鈴木さんとふたりでやるってこともできたんですね?どうして鈴木さんを呼ばなかったんですか?

細野 余裕の問題です。直前までできてないから、呼べない。というか、茂がどうしてたんだか、知らないんですけど。

鈴木 記憶がないんです、その時の。

松本 なんで俺が呼ばれたか、わかんない。

細野 ドラムはいれないといけないしさ。ドラムなしとは考えてなかった。ドラムスはコード進行ないからね。でも曲が定まってない場合、茂呼んでも、教えることができない。

Q どうです、茂さん、細野さんのギターは。

鈴木 かっこいいですよ。2フィンガー、3フィンガーが、とっても気持ちいいですよね。なかなかできない。

Q アルペジオをコーラスみたいに重ねるってのは?

細野 いや、適当ですよ。同じことをやらなければ、パターンが変わる。

 

細野がアドリブで弾いたギターに、こんな隠し味が。

高田 普通に考えたら、D A9 でいいはずが、アコースティックギターを弾いてても、ベースラインを内包している。

 

最後に、ボーカルだけで聴いてみよう。

細野 こういうレコーディングは、これ以来やったことがない。直前に出来て、すぐ歌うっていう。パンチイン、パンチアウト(歌や演奏を編集でつなげる技術)で録ってくれと。細切れに歌をとっていった。

だからいまだにこの歌、歌うたえない。緊張する。

(それと) 僕、一か所メロディを間違えてる。

松本 どこ?

細野 『起き抜けの』のところ。一音下がってる。でもみんなカバーするとき、そのまんま歌ってる。違うんだよ~(笑)

松本 それはもう手遅れ。

細野 手遅れさ。

松本 まぐれでできた、世紀の名曲(笑)

 

1971年11月20日。

『風街ろまん』発売。

ミリオンはおろか1万枚ほどしか売れなかった。

その後、サードアルバムを発表して、はっぴいえんどは解散。

80年代に入り、YMOの活躍やロングバケーションが大ヒット。

はっぴいえんどは再評価され、アルバムはじわじわ売れてゆく。

 

そして、2003年、ソフィアコッポラ監督が、映画『ロスト・イン・トランスレーション』で、『風をあつめて』を使用。映画は世界中で公開され、思わぬ反響を生む。この曲を日本語のまま歌う外国人が続々と増えている。

 

ー YouTubeで『風をあつめて』を歌う外国人の映像が流れる ―

細野 ロサンゼルスとかニューヨークで、アメリカ人の若いのが僕の前に来て、『風をあつめて』を歌ってくれる。

松本 日本語で歌うわけ?

細野 うん。

松本 英語で歌ってたらさ、こんなグレードの高いものは出来なかった。日本語でやるか、細野さんと論争しているときに、「じゃぁ、松本ね、日本語の歌詞で、全世界で通用すると思うか?」っていうから、「ある確率もある。それは否定できない。どんな小さな確率でも追究すると、あとで夢が叶う」

 

松本 二枚目で最高峰が来ちゃうっていうのは、早すぎたよね。もうちょっと試行錯誤したかったな。

鈴木 少ないチャンネルで作ってるから、よくまとまってる。最初からある程度方向性は決まっていて、そういうふうに作られたものは、空間が気持ちいい。音と音の隙間が、とっても気持ちいい。

松本 最近、いいこと言うねぇ。

細野 大人になったね(笑)

細野 いまの茂の話、この時点で8チャンネルのテープレコーダーしかなかった。その8チャンネルでしかできないことが、ここに記録されている。

マルチがあるのか、だったら、(もう一回)ミックスしできるんじゃない、と思うんです。(これは)性ですね。ところが、いま聴いてみたら、全然ミックスする必要がない、やり直す必要はまったくないなぁって。

 

 細野さんがおっしゃってた、『サムシングエルス』の答えは?

細野 いやぁ、答えってものがないんですよねぇ。いまだに、こうやって根掘り葉掘り聞く人がいる(笑)それがサムシングエルスっていうのかな。当時、背伸びしてまでも、とにかく背伸びしてまでも、いい音楽を作りたいっていうことに、一生懸命だったことは確か。それをその時代時代でやっていくってことは、サムシングエルスを残してゆくこと。

 

Q はっぴいえんどを一言でいうと。

松本 僕、一言じゃ言えない。パス(笑)

Q ではリーダーの細野さん。

細野 僕?リーダーだったかな?僕?

松本 リーダーだったよ。

細野 あ、そう?

松本 全然、リーダーシップないけど(笑)

鈴木 前に思ったことがあるんだけど、学校の休み時間になると、みんな校庭に出る。みんな一緒に遊ぶ時もあれば、みんなバラバラになるときもある。その距離感が似ているような気がする。

松本 やっぱりいいこと言うねぇ(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

名盤ドキュメント 『愛飢を』

 

 

細野 とくに大瀧とは、冗談ばっかり言ってたなぁ、落語の話とか。笑ってばっかりいたよ。暗いバンドって思われてたけれど。

鈴木 中身はおもしろかったよね。

 

 

 

 

 

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