小津監督1958年の作品。
娘たちの「恋愛宣言」もしくは「恋愛結婚宣言」に戸惑い翻弄される父親の姿を描いた作品。今だったら喜劇にも成らないか?
昭和30年代の頃は、まだまだ封建的で、結婚には父親や一族の長の許しが必要な時代でした。
家柄や格式が重んじられ、次世代の一族が今以上の暮らしと繁栄を得られるよう、嫁や婿を見定めるのは家長の重要な役目でした。
当時のお見合いは、そんな家長どうしによる約束と確認が成された上でのもので、当人の意思、特に女性の気持ちは三番目・四番目だったようです(今でも一部ではそのようですが…)。
映画では時代の変化に翻弄され、だんだん意固地になる父親を笑いますが、一方で禁を破る娘達にも戸惑いと罪悪感があり、権利を主張しながらも泣き崩れる様子に、時代の変化に翻弄されたのは、親だけではなかったことを映し出しています。
結婚を題材にしながら、 戦後の民主主義や男女平等の思想が、庶民から上流層へ浸透する様を描いたとも言えます。実際、主人公が部下と行った銀座のバーで、後日やって来た部下がブラックアンドホワイトのポスターの下で国産ウイスキーを飲むシーンは、新たな思想の拡がりを示していると思います。