カールじいさんの空飛ぶ家/映画評 | ヤマモト探険記

ヤマモト探険記

気の向くままの街歩き。

「子供たちに夢のある物語でなければならない」との製作方針を掲げるディズニー作品ではありますが、大人にこそ見て欲しいアニメです。
オリジナルストーリーにこだわるピクサーが、親会社ディズニーの方針に従いつつも、大人向け作品に一歩近づいた、と思いました(笑)。

序盤の回想シーンは、セピア色の画面に音楽だけで、ひとつの作品に仕上がっています。
そして、何より「連れ合いを亡くした老人のその後の人生」と言うテーマは、長寿国日本に限らず、熟年過ぎた大人の関心事でもあります。

連れ合いとの思い出を大切にしながらも、固執せず、新たな人生に踏み出す姿は、切なさをも感じさせます。しかし、それこそが原題の『UP』の意味するところであり、テーマへの答だと思います。

大切な思い出と、可愛らしく愉快な仲間とのアドベンチャーというストーリーも楽しめました。

ただ、惜しむらくは、悪役の描き方。
最後をあのように簡単に切り捨てたりせず、悪役側の視点や思いを描き、世の中がそう単純でない事も描いてみせれば、より大人の作品に近づけたと思います。
せっかくの立体映画、高くても3D映像を楽しむのが良い様です。