感動したり、嬉しかったりして
泣くことはあっても
自分の弱さをさらけだすような
涙は人前では、ほとんど見せた事が
今までなかった
どうしても我慢してしまう
かっこ悪くてみじめなのは
自分の中だけでおさめておきたかった
職場である日、一本の電話が鳴った
出ると、声の大きな男性からの
クレームの電話だった
ハードなクレームだった
内容を把握したかったし
誠実に対応したいという気持ちがあったので
相手の一語一句聞き逃さないように
全神経を集中させて聞いた
聞いていくうちに
どうやら10:0ではなさそうな事が
わかったけど
不快な思いをさせてしまった事に対して
謝罪した
クレーム対応に慣れている人だったら
もっと早く終わっていたかもしれないが
謝罪しても、まだまだ続いた
「謝っても許されない事ってあるんだな」
とぼんやり思いながら
私は今まで人に恵まれすぎていたのかもしれない
会社とプライベートとは別の話だとわかってるけど
みんな許してくれたと思って生きてきた
甘いのだろうか?
その人達の優しさをまるごと全部受け取れたか?
未熟さゆえに、取りこぼしてきた事は
いっぱいあった
まだ男性の話は続いていた
相手の背景や状況を出来る限り
想像しながら対応したつもりだった
長かった
ふと
「あぁ、疲れたな」と途方にくれた
肩を揉んで取れる種類の疲れじゃなかった
人生に対しての疲れ・・・
最後はどうやって話が終わり
電話を切ったのかも覚えていない
ただならぬ雰囲気を感じていたようで
みんなが私を見ていた
心配してくれていた
それが分かった瞬間「わぁ!」っと
不覚にも泣いてしまった
席を立ちあがりトイレで泣きたかったけど
それよりも先に、体いっぱい涙で溢れて仕方なかった
そこから動けなかった
はずかしすぎるけど、どうしようもなかった
ひとりの女性がすっと横に立ち
私の背中を優しくさすってくれた
この間流れていたジュディオングの
「魅せられて」という曲は、知らないと
言っていた
そんな若い彼女が何も言わずに
ただ寄り添ってくれていた
私の中で、何かがゆっくりとひらいた
みんながそれぞれの表現で
私を気にかけてくれた
口には出さないけれども
同じような経験をたくさんしたきた事も知った
今こうして思い出しながら書いているだけで
涙腺崩壊してしまう出来事だった
多分あの時感じたあたたかい気持ちは
一生忘れないだろう
忘れたくないし覚えておきたいから
ここにも書かせてもらった
もし、いつものように泣きたいのを我慢して
トイレに駆け込んで一人で抱え込んでいたら
ずっと未消化のままくすぶって
自分の中の奥深い場所になかったことにして
葬り去られていた
私が勝手に閉じていただけだった
思っていたより世界は
ずっと優しかった
あの男性の電話がなければ
私はこの世界を体験できなかった
shanti☆