父や弟の治世を支える事務官僚の道を歩むことになった山部王(のちの桓武天皇)ですが、ここで予期せぬことが起きます。
宝亀3年(772)、皇后の井上内親王に謀叛の疑いが生じ、皇后の地位を剥奪されたのです。
彼女が天皇を呪い殺そうとしたというのです。
しかし彼女がなぜそこまでしなければならないのか、その動機が思い浮かびません。
彼女の生んだ他戸皇子が皇太子となり、次の天皇の地位を保証されているからです。
呪詛という危うい道を選ばずとも、将来、他戸の即位によって国母と崇められる立場になることが決まっていました。
そこで藤原良継と藤原百川(ももかわ)が仕組んだ陰謀説が囁かれるに至るのです。
(つづく)
※天皇については新刊書『今さら誰にも聞けない 天皇のソボクな疑問』で詳しく書いています。