秀吉が信長から中国(毛利氏)攻略軍の司令官に任じられていた当時の話です。
本能寺の変(1582年)で討ち死したとされる信長側近・野々村正成たちからの天正七年(1579)の返書にはこうあります。
「さりとては御手柄との申す事に候、天下においてその御取り沙汰にて御座候らえば(=大変なお手柄だと天下で評判になっています)」
野々村らは、秀吉の手柄を誉めちぎっているのです。
ちょうど秀吉が、毛利方へ寝返った別所長治の居城三木城(兵庫県)を囲んでいる頃にあたります。
その合戦は、秀吉が城への補給路を絶ち、後に「三木の干殺し」として有名になります。
つまり秀吉は、蟻の這い出る隙もない包囲陣を誇り、そのことが信長の耳に入ることを想定して側近たちに手柄を強調していたのです。
結果、側近たちから以上の返書を受け取った次第。
思惑通りの反応に満面の笑みを浮かべる秀吉の顔が思い浮かびます。
(つづく)
[最新刊のお知らせ]
♯塗り替えられた戦国史の謎に迫ります!
※「辻大悟ノベルズ」からのお知らせ
別名のペンネーム(辻大悟)で書いた小説『キンカコ 八人のワンダラー』(kindle版)をリニューアルしました。
♯現在から見たキンカコ(近過去)の2000年が舞台。貸し渋りが横行する時代に、銀行へ不渡り手形を掴ませるチンケな詐欺を働いていた美人詐欺師と彼女を追う現職の刑事。その二人に大蔵官僚や病院の名物院長らを加えたワンダラーたち。その八名が国際犯罪組織の野望を打ち砕く痛快犯罪ミステリー小説。20年後、30年後の近未来に生きている自分たちのために、いま戦え!