少なくとも20年以上、天文博士の地位にあった安倍晴明(一時、陰陽博士になっていたと読み取れる記録もあります)は、やがて「陰陽の達者」(『政事要略』)、すなわち、陰陽道の達人という評価を得ます。
晴明が陰陽寮を退き、つまり、今でいう引退後も、彼が陰陽道に傑出しているという理由で陰陽寮の官人を差し置き、儀式などへの供奉(ぐぶ)を命じられているのです。
晴明の影響力の大きさは、長保3年(1001)の追儺(ついな=大晦日に鬼を追い払う儀式。現在の節分の豆まきの起源とされます)の際に示されました。
この年の大晦日の数日前に一条天皇の生母(『光る君へ』では女優の吉田羊さんが演じていました)が崩御し、追儺の儀式は自粛することになりましたが、晴明が率先して私邸で追儺をおこなうと、貴族たちがこぞって追随したというのです。
また、藤原道長の日記(『御堂関白記』)にも晴明の仕事ぶりが記録されています。
『古今著聞集』の話(前出)は創作だとしても、政敵の多い道長だけに、晴明が本当に道長の危機を救ったことがあったのかもしれません。
(つづく)
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