「大化の改新のクーデター」の的(まと)は、権勢を極めた蘇我入鹿でした。
朝鮮三国(高句麗・百済・新羅)からの使節を迎える儀式が行なれる宮中で刺殺されました。
鎌足は佐伯子麻呂(さえきのこまろ)と葛城稚犬養網田(かつらぎのわかいぬかいのあみた)を刺客に仕立てますが、鎌足自身は当日、柱の陰に身を寄せ、いざという時のために弓で狙いを定めていただけ。
刺客となった二名も怖気づき、先に飛び出した中大兄皇子(のちの天智天皇)に釣られる形で入鹿に襲いかかりました。
こうみてきますと、鎌足が本当に活躍したかどうかは微妙です。
彼は、刺客や中大兄が入鹿殺害に失敗したら矢で入鹿を射殺すつもりだとされているものの、逆に刺客や中大兄を射殺し、入鹿にとりいろうとする狙いがあったともいわれています。
つまり、通説でいう彼の活躍には粉飾されている疑いがあるのです。
藤原氏が栄えるのは、鎌足の子の不比等の時代になってからです。
一方、通説でいう鎌足の活躍の多くは、勝者側の歴史書である『日本書紀』、不比等の孫にあたる藤原仲麻呂が書いた『大織冠伝』によっています。
勝者の歴史ですから粉飾はつきものです。
(つづく)
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