「泣かぬなら殺してしまえホトトギス」の真相(後編)[信長の涙] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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 舅である美濃の斎藤道三に、居城の那古屋城(名古屋市)の守りを託すという賭けにでた織田信長は村木砦(愛知県東浦町)​​​​​​を総攻撃しました。

 

 しかし、砦はなかなか落ちません。

 

 砦陥落に手こずれば、本当に舅に城を奪われかねません。

 

 『信長公記』によると、織田勢はなんども突き落とされそうになりながら砦の大堀を攻め上り、「手負死人その数知らず」という戦況でしたが、早朝の午前7時ごろから薄暮のころまで攻めたて、ついに今川勢は多くの死傷者をだして降伏したといいます。

 

 ただ、織田方の死傷者も多く、信長は砦を見下す高台に陣取り、「ご苦労、ご苦労……」とばかりに生き残った将兵をねぎらい、「感涙を流させられ候なり」と『信長公記』は記しています。

 

 後に容赦なく重臣を切り捨てる信長ですが、このときには兵たちの頑張りに涙を流して報いていたのです。

 

 若いころには情け深い一面があったのです。

 

 「泣かぬなら殺してしまえホトトギス」は、あくまで畿内に敵がいなくなり、彼の専制がはじまってからのイメージといえるでしょう。

 

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