「泣かぬなら殺してしまえホトトギス」の真相(中編)[美濃の蝮に城を預ける] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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 佐久間信盛が織田信長に切り捨てられたのは事実です。

 

 たしかに信盛は本願寺相手に苦戦していました。

 

 しかしその間も彼は、四方に敵を抱える信長の参陣要請に応え、忠を尽くしてきています。

 

 そのことを考えると、追放という処置は厳しすぎたといえます。

 

 このように「泣かないホトトギス」(信盛)を平気で殺してしまう信長も意外な素顔を覗かせたことがありました。

 

 天文3年(1534)生まれの信長が21歳の正月の話です。

 

 まだ尾張一国も統一していなかった信長は、駿河・遠江の今川義元から圧力を受けて苦境に陥っていました。

 

 しかも、その今川勢への防波堤である緒川城(愛知県東浦町)が風前の灯火となったのです。

 

 このままでは尾張が今川勢に席巻されかねません。

 

 そこで今川方最前線の村木砦(同)攻略が信長にとって最重要課題となったのですが、全勢力を注がなければ砦は落ちそうにありません。

 

 やむなく信長は舅である美濃の斎藤道三に、居城の那古屋城(名古屋市)の守りを託すという離れ業を演じました。

 

 舅とはいえ、相手は蝮と呼ばれた武将。

 

 城を奪われるリスクはありましたが、信長は賭けにでたのです。

(つづく)

 

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