独自色を打ち出そうとした5代将軍徳川綱吉の都合で大老職を解かれて失脚した忠清ですが、彼のような譜代の名門が失脚することそのものが異例です。
そのため、後世そこに何かあると勘繰られた面は否めません。
とくに忠清には宮将軍招聘の一件があったがために、興味本位で下馬将軍などの尾鰭がついたのではないでしょうか。
例の女中の懐妊の話を踏まえますと、忠清はもしかすると、綱吉の器量を危惧したのでなく、彼が将軍になって女中の子が男児だった場合、6代将軍の座を巡り、必ず騒動が起きると考えたのではないでしょうか。
その深謀遠慮の結果、後腐れのない宮将軍を一代限りで招聘しようとしたとも考えられます。
だとしたら、彼を「悪人」とみなす解釈は是正されなければならないでしょう。
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