日本を開国させた「ペリー提督」の意外なアキレス腱④[アメリカの政権交代] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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 ペリーが抱えていたアキレス腱とは何だったのでしょうか。

 

 第一にペリーは、乗員への暴力に報復することを除き、フィルモア大統領から軍事力に訴えてはならないという命令を受けていました。

 

 幕府が上陸を拒んだら武力に訴えて上陸する準備をさせていましたが、それはあくまで「最後の手段」として。

 

 このようにまず交渉の舞台裏で、行動が制約されていたのです。

 

 そして二番目のアキレス腱は、彼が託された大統領国書そのものにありました。

 

 というのも、ペリーが嘉永5年10月13日にノーフォーク港(バージニア州)を出港して翌年6月に浦賀に来航する間に、アメリカ国内で政権交代が実現し、ホイッグ党(後に共和党へ吸収)のフィルモアから民主党のピアース(第14代大統領)へ政権が移っていたのです。

 

 つまり、幕府が受け取った国書は正確には前大統領が署名した文書という形になり、その文書で通商や開港、難破したアメリカ国民の保護を日本に求めていながらも、外交上の効力には疑問符がつきます。

 

 ペリーは、そんなことは一切知らない幕府に国書を渡すや、1年後に再来航して返事を聞くと述べ、6月12日、浦賀沖を後にしました。

 

 来航してわずか9日後のことです。

 

 こうしてペリーは幕府に以上のアキレス腱を勘づかれない間にさっさと国書を渡し、引き上げようとしたといえそうです。

 

 しかし、じつはもう一つ、彼は大きな問題を抱えていました。

(つづく)

 

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