「西の渋沢」と呼ばれる男「五代友厚」の謎(最終回)[残るダミー疑惑] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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 当時の道民らにしてみますと、開拓使の財産が大阪財界に乗っ取られ、その商権までもが奪われることを意味します。

 

 そこで、当時の新聞が一大スキャンダルとして事件を取り扱いました。

 

 こうして黒田清隆と五代は窮地に陥ります。

 

 結局、払い下げは中止となるのですが、そもそも、この疑惑を誰がマスコミにリークしたのでしょうか。

 

 当時、新政府内では大隈重信(佐賀藩出身)と伊藤博文(長州藩出身)らが対立し、伊藤らは官有物払い下げ事件を大隈らの反政府陰謀であるとして、彼とその一派を罷免しました(明治14年の政変)。

 

 つまり、五代は政府内の政争に巻きこまれた可能性があります。

 

 また、五代らの関西貿易社が北海社へ払い下げを求めたのは、前出のリストにない岩内炭坑と厚岸(あっけし)官林だけだったことも判明し、彼への嫌疑は冤罪のように思えます。

 

 しかし、事はそう単純ではありません。

 

 「甲乙両社」と社名は匿名になっていますが、北海社(甲社か)と関西貿易社(乙社か)が、最初から合併を前提にし、世論の攻撃をかわすためにそれぞれ別会社でスタートすることになったという史料の存在も明らかになっています。

 

 だとすると、やはり疑惑の通り、北海社は関西貿易社のダミーということになります。

 

 この事件は五代の唯一の汚点といえそうです。

 

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