宗春の『温知政要』には、見世物興行の景気浮遊効果についても述べられています。
経済が停滞している際の景気浮揚に期待し、そうした場所で喧嘩などの騒動があったとしてもその都度取り締まればいいのであって、時とともに混乱はなくなるものだとしています。
そして改革そのものについても、君主一人が自分の考えだけで政治を行う危険性を訴え、他人の意見を聞くべきだというのです。
『温知政要』には納得できるところも多く、宗春がただの派手好きの暴君ではなく、明確な政治理念のもと、将軍徳川吉宗の緊縮財政に対して、拡大経済政策で対抗しようとしていたことが窺えます。
一方、のちの関白一条兼香(いちじょう・かねか)は日記の『兼香公記』に、宗春が江戸の将軍家に叛意を抱いているという風説を載せています。
時代劇などで宗春に幕府転覆の野望を抱かせるのは、こうした風説が元になっているのでしょう。
宗春の将軍への態度みれば、誰もがそういう風説を流したくなるのでしょうが、あくまで噂です。
(つづく)
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