矢口の渡しの事件からまた、九年の年月が流れます。
正平二三年(1368)のことです。
前年の暮に二代将軍義詮が没し、足利政権は三代目義満の時代へと代替わりしていました。
その機を逃さず、義宗が七月に上越国境付近で挙兵します。
ところが、関東管領上杉憲顕の軍勢に敗れ、沼田(群馬県)あたりで討ち死にしてしまいます。
ただし、討ち死にした場所は越後説(長岡市)などもあり、合戦の内容も詳しく伝わっていません。
さらに義宗はこのとき死なず、伊予まで逃れたという伝説も残っています。
この新田兄弟の評価は難しいところですが、南朝の忠臣としての姿勢を貫き、さらには兄弟二人とも伝説を残していることを考えると、その死が惜しまれるような人物であったのだと思います。
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