『レッド・ドラゴン』を観ました。
FBI捜査官のグレアムが追っていた事件の犯人は、たびたび助言を仰いでいた精神分析医レクターだった。乱闘の末に二人は重傷を負い、レクターは逮捕され、グレアムはFBIを辞職する。
それから数年。FBIの同僚だったクロフォードがグレアムを訪ねてくる。
一家が惨殺された事件の捜査に息詰まっているFBIは、現役時代に辣腕を振るっていたグレアムに協力を依頼。そして、グレアムを通じてレクターの助力を得たいというのが本音だった。
気乗りしないながらもレクターの的確な助言により、グレアムは“噛み付き魔”と呼ばれる犯人に近付いて行く。
一方、“噛み付き魔”の正体であるダラハイドは、盲目の女性リーバと親しくなり……といったお話。
要約すると、レクターと組んだグレアムが殺人鬼を追い詰める話です。
『羊たちの沈黙』『ハンニバル』に続く、レクター博士シリーズ(と便宜的に呼ぶ)の3作目です。
どうせ『羊たち~』でレクター博士の人気が出たから『ハンニバル』が作られて、挙げ句には『羊たち~』の前日譚、いわゆるエピソードゼロ商法なんだろう?と勘繰りたくなるところ。
が、本作の原作『レッド・ドラゴン』は『羊たち~』よりも先に発表されていた作品、かつ映画としても『刑事グラハム/凍りついた欲望』という作品として公開されています。
つまり本作は『刑事グラハム~』のリメイク作でもあるのです。こちらも、いつかは観てみたいですね。
そんな『刑事グラハム~』にもレクターは登場しているようですが、評判としてはあまりパッとしないようです。
それもそのはず、客観的に本作を見れば分かる通り、本来はレクターは脇役ですからね。
それでもレクターが注目されるのは、アンソニー・ホプキンズさんの怪演によるところが大きいでしょう。冒頭でのグレアムとのひと悶着を終えてからというもの、あとはずーっと監獄の中にいるだけなのに、相変わらずの存在感。
グレアムやダラハイドとの頭脳戦を見てしまえば、一瞬でもシャバに出すのは危険すぎる…!
そんなレクターとほぼ対等の立場にあるグレアムもなかなかのやり手。
本作の公開当時であればエドワード・ノートンさんのキャスティングは絶妙、かつ納得です。
『ハンニバル』あたりで、レクターをよく知る人物としてグレアムにも登場して欲しかったなーと思うものの、それも叶わぬ妄想なんですが…(キャストの誰かが亡くなったわけではないのでご安心を)。
他にも、ハーヴェイ・カイテルさんやレイフ・ファインズさんといったキャスティングも豪華です。
レーフ・ファインズさんが演じるダラハイドは、本作で起きる事件の犯人。
今ではありがち(どころかとっくに減少傾向にある)ですが、幼少期の辛い体験で人格が歪んでしまった系の人です。
そこから、本作で描かれるような猟奇的な殺人を犯すようになる、もう一人の自分が生まれる決定的なきっかけを見せて欲しかったかな。
どんなダラハイドと恋に落ちるのが盲目のリーバ。
姿を見れない代わりに内面をしっかり捉えた上で、徐々にダラハイドの邪悪さを気取り始める……というパターンを予想しますが、そうはならないのが想定外。
得てして盲目キャラって物事の真意を見抜く力を持ち合わせているものですが、リーバはダラハイドの上辺の優しさにキチンと騙されるんですよね。それどころか、割と男にだらしなさそうにも見えるくらい(笑)。
目が見えないのは気の毒だけど、そこまで同情できないキャラなんですよ。
前作『ハンニバル』は悪ノリの度が過ぎた過剰なグロ描写が嫌いでしたが、その後に作られた作品という事で、これがさらに強まるのかなと思いきや、もう少しマイルドになっているのでだいぶ気楽に観れました。要所要所で過激なシーンもあるけどね。
あの車椅子は衝撃だったな…!
エピソードゼロ作品という事で、本作のラストがエピソード1たる『羊たち~』に繋がるのは分かりきっているネタバレです。
となれば、まさかあのFBIの新米捜査官が…?と期待したくなりますが……さて、どうでしょう?
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配信版は見当たりませんでした。
↑のBlu-ray版は映像特典が多め。中でも監督であるブレット・ラトナーさんを追う撮影日記は一見の価値があり(個人的には必見レベル)、ななんとマイケル・ジャクソンが撮影現場の見学に来るという大サプライズは本編以上にビックリしました(笑)。
あと、アンソニー・ホプキンズさんのインタビューも興味深いですね。ああいう役は幼稚だと言い切ってしまうものの、台本を250回は声に出して読むってんだから、この頃でも既に名優と呼ばれている人も陰の努力は惜しまないんだなぁと感心しました。
それにしても、このダサいタイトルは原題の直訳とは言え、こういうのこそ邦題として変えて欲しかったな~。