つい先頃、何だったかのイベントでトム・クルーズさんとブラッド・ピットさんのツーショット写真が公開されました。
そんな二人が知り合うきっかけとも言える作品でもある、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』を観ました。
サンフランシスコのホテルの一室で、マロイは200年も生きているヴァンパイアだというルイへのインタビューを始めようとしていた。
ルイは語り始める――。
1791年、ニューオリンズで農園を営むルイは妻に先立たれ、自暴自棄な生活を送っていた。そんなルイの前に現れたレスタトは、突如ルイの首筋に噛み付く……レスタトはヴァンパイアだったのだ。
レスタトを受け入れ、ヴァンパイアとして生きる道を選んだルイ。ヴァンパイアとして生きるには人間の血を飲み続けなければならず、そのために人間を殺す事に抵抗を感じるルイは苦しむ。
その後、二人は少女クローディアを仲間に引き入れ、3人での暮らしが始まる。だが、幼いクローディアはレスタトに不快感を示すようになり、ついには彼を殺してしまう。
ルイはクローディアを連れてヨーロッパに渡り、仲間を探す旅に出る……といったお話。
要約すると、長きに渡り生き続けてきたヴァンパイアの回顧録です。
トム・クルーズさん主演作は多々ある中、代表作として挙げられる事が意外に少ない作品です。
それ故か、何だこのスゲー懐かしい感は。先に綴ったトムクルさん&ブラピさんの話がなければ思い出す事もなかったよ(笑)。
そんな感じで埃が積もった蓋を開けてみたところ、これがかなり面白い。古い作品が苦手な若い人でも耐えられそうな感じ?
90年代はヴァンパイアをモチーフにした作品が濫造されましたが、ベタなヴァンパイアのイメージを覆す本作の独自性は無二のものだと思います。
十字架やニンニクを嫌う習性を迷信だと斬り捨てたり(ヴァンパイア作品の祖である『吸血鬼ドラキュラ』を一蹴するかのよう)、そもそも人間がヴァンパイアにインタビューをするというシチュエーションが新鮮です。
新鮮と言えば、トム・クルーズさんが本作のような役を演じるのも意外性があります。
まずはルックスの変貌ぶりに軽く驚きます。金髪でロングという、今日までのトムクルさん史上、こうまでイメージを変えた役ってほとんどないと思います。
本作は1994年の作品で、この頃のトムクルさんと言えば健全なヒーローがよく似合いましたが、本作で演じるのはコテコテの悪役。
クローディアのような年端の行かない子供には手を掛けないのがホラーモンスターのマナーでありながら、そんなのもお構いなし、周りの人が苦しんでいる姿を見てフハハハと笑っちゃうような、まさに邪悪を絵に描いたような困った人です。
選択の余地もなくヴァンパイアにされてしまった辛い過去はあるんだけど、そこでお涙頂戴なシーンがないのも良いんですよ。
映画の悪役は、このくらい生粋の絶対悪の方が面白くなるんです。
その逆に、ずーっと苦悩しているのがルイ。
ヴァンパイアは(なるべく)人間の血を飲まなければ生きて行けない、でも人間は殺したくないという道徳心が勝っているため、家畜の生き血で空腹を満たす姿は何とも健気。ネズミは止めた方がいいと思うけど(笑)。
「ヴァンパイアも泣く?」
「永遠のうち、一度や二度はね」
常に苦しみ、悲しい体験に慣れてはいるものの、彼女の事を思い出して涙を流すシーンは切ないですね。
レスタトを始めとするヴァンパイアの多くが邪悪の化身たる存在でありながら、どこか見入ってしまうのは全編に渡って漂う耽美なビジュアルのおかげでしょう。
本作は主に19世紀の欧米が舞台で、ヴァンパイアの多くは貴族として振る舞っていますが、19世紀の貴族の衣装を着ているだけで高得点を取れるよね(笑)。
さらにヴァンパイアは総じて長髪ってんだから、日本で言うところのBL漫画にもってこいのシチュエーションです(総じて名前の響きもイイ感じに思える)。そっち系の漫画家にコミカライズしてもらえれば、あるいはハネる可能性も感じますね。
「レスタト様〜、ステキ〜!」
「ルイ〜、凛々しい〜!」
「アーマンド様〜、カッコいい〜!」
「クローディア、はよタヒねwww」
みたいなノリで盛り上が……らないな…。
多くの人間は長生きをしたがり、永遠の命や不老不死に憧れるものです。
ある程度のルールを守っていれば、ヴァンパイアは何百年も長生きできるようですが、これが決して良いものではないと思い知らせるのがクローディア。
本作ではヴァンパイア化した瞬間に身体の成長が止まるようで、どれだけ時間が経っても風貌が変わる事はありません。髪を切ってもすぐ元の長さにリセットされるくらい(ストパーも無駄なのかな…)。
クローディアがヴァンパイアになったのは10~13歳くらいに見えますが、綺麗な大人の女性に憧れを抱いたところで自分がそうなれるどころか近付く事すらなく、成長を奪われたクローディアは子供なりに苛立ちを覚え、怒りにまで発展します。
クローディアを演じるキルスティン・ダンストさん(この頃はまだ”ちゃん”が合ってるかな?)の、このあたりの芝居というか表現力が凄まじくてね。レスタトに向ける敵意は鬼気迫るものがあり、ガキだと思って舐めてるとドえらい目に遭います。
現在でも活躍をする女優として名が知れているのを考えると、本作を観て末恐ろしい子が現れたわいと思うのも当然なのです(実生活では紆余曲折もあったようですが…)。
ヴァンパイアってカッコイイ、俺もなりたいッス!というのが、ルイの話を聞き終えたマロイの結論です。若者らしい、短絡的で浅い考えですね。
これにルイは激怒しますが、これだけ延々と話してもこの苦しみを共感してもらえない虚しさ、かつ孤独である寂しさを痛感した苛立ちによるものなのかもしれません。
ところで、本作のキャストのビリングはトムクルさんの名が一番初めに出てきますが、正確にはトムクルさん演じるレスタトは脇役です。主演には違いないけど主人公ではないやね。
何のしがらみもなければ、本来のビリングはブラピさんが一番目、トムクルさんは一番最後=トメというのが正解です。この頃にはブラピさんも注目されていますが、トムクルさんにはまだ遠かったしね。
そんなこんなでお話が終わりますが、本作には『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア』という続編があります。
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…もうさ、レスタトがロックスターになっちゃうというトンデモ設定(…はぁ?)から萎えるよね。
トムクルさんが出ないだけでなく、ダッセー邦題の効果もあり、いかにもなB級ホラー臭がプンプンするんだよな。
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Blu-ray版の映像特典は、ちょっとしたメイキング。
他には監督であるニール・ジョーダンさんの音声解説もあります。
ちなみに、吹替版でトムクルさんを担当するのは鈴置洋孝さん。
今では森川智之[モリカワ・トシユキ]さんがトムクルさんの吹き替えとしてフィックスしていますが、その昔はトムクル=鈴置さんだったんだよね。懐かしさもあるので、いつか吹替版も見てみようと思っています。
ところで、車の中の片付けをしていたところ、
このタイミングで小説版を発見。えっ、こんなの買ってたっけ?状態です(笑)。
久々に読み返してみようかなーと思うも、約550ページ(!)という厚さに断念…。
ちなみに、原作=『夜明けのヴァンパイア』は70年代の作品だったんですね。なんと前衛的な…!