『2010年』を観ました。
月で発見された謎の石碑=モノリスの発掘、ディスカバリー号に搭載された人工知能ハルの不調による乗組員の遭難があった2001年。
それから9年。ディスカバリー計画の失敗により宇宙飛行議会の議長を降ろされだフロイドは、ソ連と合同でディスカバリー号の行方を追う計画への参加を依頼される。
ディスカバリー号を設計したカーノウ、ハルを開発したチャンドラと共に、ソ連の宇宙船レオノフ号に搭乗したフロイド。
やがてレオノフ号は、木星付近に漂っているディスカバリー号を発見。カーノウとチャンドラの働きでハルは再稼働、ディスカバリー号も航行可能となった。
そんな折、ハルを通してフロイドの下に、早々にこの場を離れろというメッセージが届く。益体もないメッセージを訝しむフロイドの前に現れた差出人、それはかつてディスカバリー号の船長を務めていたボーマンだった……といったお話。
要約すると、前作『2001年宇宙の旅』で解明されなかった謎を解こうとする話です。
今もなお揺るがないSF映画の名作『2001年宇宙の旅』の正統な続編です。
あれを見た人であれば、よくもまぁあんなのとダイレクトに関わりのある作品を作ろうという気になったなーというのが本音なんじゃないかなと。まともな人なら手を出すべきでないと直感的に分かりそうな作品ですからね。
でも、それが世の中に現れたという事は、それなりの自信があった表れでもあるんじゃないかと。
正直、16年も前の作品である前作に見劣りしているところは多々あります。前作の監督であるスタンリー・キューブリックさんも関わっていないのであれば、なおさら格が低いと感じてしまうのも無理はありません。
が、だからって本作を話半分くらいにしか見ないのは勿体ない話で、少なくとも通俗性に関しては本作の方が遥かに上です。
前作って名作には違いないんだろうけど、ぶっちゃけ、よく分かんないじゃないですか(笑)。今作はそんなモヤッと感がなく、スッキリした気持ちで観終えられるんですよ。しっかりエンタメができているんですよね。
傑作とか名作にはほど遠いとしても、少なくとも力作以上の作品である事は間違いありません。
宇宙空間の描写については、先日観た『セロ・グラビティ』と比べてしまうのは残酷ですかね(笑)。
こちらは1984年の作品ですが、当時なりの技術や考証を注いで、やれるだけの事をやっているのは伝わってきます。
宇宙遊泳の緊張感は上手く描けていて、ハラハラ感がよく伝わってきます。
現実味はあるけど史実に基づく話ではないので、明らかにキューバ危機を想像させるアメリカとソ連の関係をブッ込むのはチト無粋に思えました。
ただ、これもドラマの一部で、地上(というか地球)では両国が戦争でも始めそうなくらいに対立しているけど、宇宙では両国が共同作業をしている。世界平和に繋がる小さな一歩でもあるんですよね。
両国が協力し合って地球への帰還を果たせるようになると同時に、キューバ危機も回避……というのはご都合的だけど。
前作の問題児だった人工知能HAL-9000=ハルは今作でも登場。
ハルの声はダグラス・レインさんが続投、温かみがありながらどこか冷たさも含んだ独特の喋りは今作でも健在です。
そして前作の謎の一つでもあったハルの暴走について、その理由が語られますが……落としどころとしてはあんなモンだろうね。ポリティカルサスペンスっぽくもあるというか。
モノリスと強引に結び付けてファンタジーっぽくせず、あくまでリアルな言い分にしたのは潔いと思います。
でもさぁハル君……あれだけ賢いというか人間臭いんだから、もう少し上手く立ち回れなかったのかね…。要はテンパっちゃったって事でしょ(笑)?
そんなクソ真面目で頑ななハルの、ラストの判断にはホロッとしちゃったよ。
そしてボーマンも今作に登場。
なるほど、前作のラストでの超体験がボーマンをあんな風にしちゃったのかと。
モノリス、ハル、そしてボーマンは事態をややこしくさせるばかりの、グルになっているとも言える(笑)キャラですが、ハルはただの仲介役でしかない事はハッキリしました。
あとはボーマンとモノリスの関係ですが、ちょっとリアルさを欠いてるように思えるものの、そこは地球人程度の人知には及ばない奇跡が起こったんでしょう。
この辺は見る人それぞれの解釈が正解だと思います。
ハルの現象については説明されたので(チト苦しいけど)、あとはモノリスの問題です。
何かしらの意思がありそうな事は前作でも言及されていましたが、今作ではそれを言語化=我々に分かる言葉で伝える事があるのが分かったくらい。あとは怒らせると怖いとか(笑)。
でも、何だかんだでモノリスの謎は謎のままでいてくれる方がいいんですよ。
無限にある星々の中の一つである地球程度の文明レベルでは分かり得ない、まさに大宇宙の神秘って感じでロマンがあるじゃないですか!
主人公であるフロイドを演じるのは、個人的に贔屓にしているロイ・シャイダーさん。
ヒーロー系を演じる事が多いけど、かと言ってド派手な大立ち回りがあるようなアクションではない、普通のオジサンっぽさがいいんですよ。旬を過ぎたヒーローとでもいうかね。
1ミリも共感できない悪役を演じていないのも好印象。
そして、この人の名前がある作品はA級映画から遠ざかるという…(笑)。
そしてラストはあまりにも大胆というか、衝撃的すぎてポカーン…。『スター・ウォーズを連想したよ…。
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Blu-ray版には当時のメイキングを収録。
原作者アーサー・C・クラークさんも意見を出しているので、やっぱり正統な続編です。
前作で使われたディスカバリー号を始めとするミニチュアの模型や設計図は、監督のスタンリー・キューブリックさんが他の作品への流用を嫌がり、全て廃棄してしまった事が語られます。ちょっとした世界遺産になり得そうなものを、よくもそんな…!
なので、本作で使われるミニチュアは全て新規で作り下ろされたものなんだとか。
ディスカバリー号は前作のデザインに限りなく近付けていますが、それ以外の、いかにも80’sSF映画っぽいセットはシド・ミードさんによるデザインです。そういば、どことなく!