『ケープ・フィアー』を観ました。
弁護士であるサムの前に、14年の刑期を終えたケイディが現れる。
サムの弁護が至らなかった事を未だに深く恨んでいるケイディは、サムの行く先々で姿を現す。
ケイディの嫌がらせは妻子にまでも及び始め、サムは警察の友人や私立探偵の協力を得るものの、刑期中に法を学び、罪にならないギリギリの線を見極めるケイディには警察も手を出せない。
ケイディの策略により濡れ衣を着せられる立場となったサムたちは、身を隠すためケープ・フィアー川にあるボートハウスに向かうが……といったお話。
要約すると、自分が刑務所に送った男に狙われる弁護士の話です。
知名度は低いながらも隠れた名作である『恐怖の岬』のリメイク作品です。
基本的にストーリーは同じ、出演していた俳優の客演、原曲に近付けてアレンジした劇伴といった、常にオリジナル版を意識した作風は、特に昨今であれば良作とされるでしょう。いわゆる“オリジナル版へのリスペクト”(ぷぷっ)ってやつが満載だし。
そもそも『恐怖の岬』という作品は知名度が低い(と思う)ので、そういう作品がリメイクを機に再評価されるのはいい傾向です。俺ッチも含め、本作がなければ『恐怖の岬』という作品を知り得る機会なんてなかっただろう?
逆に、誰もが知っているような名作をリメイクする方が不粋に思えます。
本作が良作に思えるのは、なるべくオリジナル版に忠実にしただけでなく、ケイディを演じたロバート・デ・ニーロさんによるところが大きいはずです。名前で客を呼べる人ですしね。
デ・ニーロさんはカメレオン俳優と呼んでもいい人で、またそんな役?とマンネリ感を与える事がほとんどないのが好きです。
逆を言うと、どんな役でも節操なく引き受けてしまうのが玉に瑕ですが(笑)。
そんなデ・ニーロさんがケイディを演じるんだから、主役を食っちゃうどころか全てを持ってっちゃうよね。出所後、初めてサムの前に現れた際の映画館での態度からして強烈すぎる!
オリジナル版のサムは、あくまで弁護士としての仕事を全うした上でケイディに逆恨みされる姿が気の毒に思えました(グレゴリー・ペックさんが演じているのも大きい)。
これに対し、本作でのサムは割とクズっぽい真似をしているんですよね。ケイディ事件の事実を隠蔽したり、不倫をしてたり(しかも否認をし続けて隠し通すくらい)と清廉潔白と呼ぶにはほど遠い人物です(笑)。
つまり、ケイディはサムという一個人の策略によって陥れられたようなものでもあるんですよ。
この手のスリラー作品の犯罪者は生粋の邪悪だからこそ恐ろしいし、クライマックスのアクションのオチとして殺してもいい理由になるものなのに、サムのエゴが見え隠れするせいでケイディに同情の余地が生まれてしまうのはモヤッとします。
崩壊寸前とまでは言わないけど、サムの家庭はかなり冷えています。
ギクシャクしていてる両親を見る娘のダニエルの心は荒み気味で、毎日を退屈しながら暮らしています。悪人だと知っていながらケイディの誘惑に乗ってしまうのは刺激を求めての事なんでしょう。
そんなダニエルの見せ場と言えば、サムの指をしゃぶるとこですね。官能的という言葉がよく似合う、実に印象的な名シーンです。
ダニエルの唇を触るだけでなく、指を入れるのはデ・ニーロさんのアドリブだったようですが、これに対応できてしまうジュリエット・ルイスさんの度胸には驚くべきものがありますね。この後の、恥じらいと罪悪感を混在させたような態度も絶妙!
当のルイスさんに、この撮影が楽しかったと伝えられた監督のマーティン・スコセッシさんとデ・ニーロさんは困惑していたそうです(笑)。
オリジナル版の主演だったグレゴリー・ペックさん、ロバート・ミッチャムさん、マーティン・バルサムさんの出演は豪華なファンサービスですね。それぞれ、オリジナル版で演じた役の敵に当たる役を演じているのは、ちょっとしたおふざけ要素なのかな?
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Blu-ray版は映像特典多数。スタッフ&キャストが本作を振り返る系のドキュメンタリーです。主要キャストが多めに登場しているのがいいですね。
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