『キー・ラーゴ』を観ました。
フロリダ半島沖にある列島の一つ、キー・ラーゴ。
兵役を終えたフランクがキー・ラーゴにやって来たのは戦友ジョージの死を報告するためだった。ジョージの父でありホテルを経営するテンプル、その娘でありジョージの妻だったノーラはジョージの訃報に肩を落とす。
やがてキー・ラーゴに嵐が近付いてきた頃、ホテルの客だったロッコとその一行はフランクたちに銃を突き付ける。ロッコの正体はギャングの大物で、ある取引の場所としてテンプルのホテルを選んでいたのだが、嵐により取引相手が足止めを食っている事に苛立っていた。
足が不自由ながらもロッコの脅しに屈しようとしないテンプルに対し、ロッコに懐柔されるばかりで無気力なフランクの姿にノーラは失望の色を隠せない。しかし、無抵抗な人々が次々とロッコ一味の犠牲になる光景を見るフランクは……といったお話。
要約すれば、嵐のためホテルに閉じ込められた主人公とギャング一味の話です。
映画がまだモノクロだった1940年代のクラシック俳優と言えば、個人的にはハンフリー・ボガートさん一択です。好きになったきっかけは何と言っても『カサブランカ』。
ボガートさん、いや、敢えてボギーと愛称で呼ばせてもらいますが、シニカルな口調で他人に執着しないドライな人に見えながら、実はハートは熱い人情家というキャラがよく似合うんですよ。これぞボギイズム!と勝手に命名。
逆を言えばそればっかなんですが(笑)。
ルックスに関しては世間での評価はだいぶ低いようですが、そんな役を演じているボギーを見てると、カッコ良く思えてくるんでしょうね。
ダンディズムを身に着けたいと思う人はボギーを見習えばいいんです(?)。
で、本作の話。
以前に観た『三つ数えろ』があまりにも難解な作品だったので(回を重ねて観ると理解が深まってくるけど)、それが頭の片隅に残っているせいでチト身構えてしまいましたが、こちらにそんな懸念は無用、気軽に楽しめる娯楽作です。
外は嵐で逃げようにも逃げられず、ホテルに閉じ込められた主人公たちとギャングたちのスリリングな一夜を描いた作品という事で、ちょっとした密室劇の様相。
4人の手下を従えた大物ギャングが相手とは言え、こっちにはボギーがいるんだ、そのうち痛い目に遭わせてやるぜ……と思いながら見るのが普通ですが、なかなか腰を上げてくれません。まさか本当にへぇこらするばかりのダメ男なんじゃ?とじれったくもなってきます。
もちろんそんな事はなく、悪事を見逃せない正義の心から来るものもあるんでしょうが、基本的に戦いたいという欲求がボギー演じるフランクを突き動かす衝動になっているのが新鮮です。まるでベトナム帰りみたいじゃない(笑)?
だからって、いきなりホテルのロビー等でバンバンやり合うのではなく、多勢に無勢である事を念頭に置いた上で、虎視眈々と隙を見計らうあたりに有能な軍人だった事を臭わせます。
そんなフランクと敵対するロッコは、金力に物を言わせて有力者を動かせるほどの大物ギャング。
躊躇いもなく人殺しができるなんて当たり前ながら、自分らに歯向かうフランクたちを生かしておくのは余裕の表れにも見えますね。
ほぼほぼ無抵抗なフランクたちをザコ視する反面、ホテルを襲う嵐に恐怖を感じるあたり、真に怖いものを分かっているのが面白いキャラです。
ちなみに、ロッコを演じているのはエドワード・G・ロビンソンさんという方。名前だけは見知りしていたんですがね。
で、このロビンソンさんとボギーはウン十年後に、そしてマイケル・ジャクソンさんを加えて再共演を果たす事に…!って、あんまマジに受け取らないで欲しいんですが。
何を言ってるのかと思う人は『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』を見よう!
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そしてボギーの映画と言えば、女性とのロマンスも欠かせません。
相手役は『三つ数えろ』でも共演したローレン・バコールさん。本作の時点ではどうだったのか知らないけど、プライベートでは夫婦だったという話は割と有名です。
そんな蜜月な関係にあるんだから実生活に倣い、二人が結ばれてハッピーエンド……になるだろうけど、明確に描いていないのがいいですね。イチャつくシーンもほぼ皆無なのって地味に珍しい。
それ故、ムーディーなラブシーン等で水を差す事もなく、キチンとスリル&サスペンスを楽しめる良作でした。
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Blu-ray版は映像特典は予告編のみ、珍しく吹き替え版も収録しているのが嬉しいですね。
余談ながら……Blu-ray版のジャケット、俺ッチが買ったのと全然違うんですけど!
何だよ、この味気ない図柄はよぅ…!