観た、『クリフハンガー』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『クリフハンガー』を観ました。

 

かつて山岳レスキュー隊員だったゲイブは、自らの判断ミスで親友ハルの恋人を死なせてしまった事を後悔していた。

一方、クエイルンの一味が財務省の紙幣を乗せた飛行機をハイジャックするが、作戦は失敗。紙幣が入った3つのケースを落としてしまうだけでなく、自らも山中に不時着してしまう。

クエイルンらの無線を受けハル、そして一度は辞めたつもりだったゲイブらは、お互いのわだかまりを捨て切れないまま救助に向かう。

クエイルンらと遭遇した二人は落としたケースの捜索を強要されるが、ゲイブは隙を見て一味から離脱。恋人ジェシーと共に、クエイルンの作戦を打ち砕こうとするが……といったお話。

 

星の数ほどあるアクション映画ですが、山岳を舞台にしたそれは意外に少ないと思います。

本作の場合は山岳と言っても、ロッククライミングでもしなきゃ登れないような断崖、かつ目も眩むような高々度!

少なからずは使っているんでしょうが、現在ほどCGを使えない時代の作品ですから、その多くは本物。マットアート(=背景絵)は随所に見て取れますが(笑)。

どうやって撮ったの?とか、本当にこんな所に行ってるの?とか、舞台裏が気になるような映像ばかりです。

それらが凝縮されたのが冒頭の10分で、高所恐怖症の人は、ここだけでリタイアしてもおかしくないくらいの恐怖です。

本作に関して、「最初の10分を見れば終わり」なんて揶揄も聞こえますが、逆を言えば、その10分には確実に見応えがあるという事です。

 

本作のテーマは、“再起”。

例えば、仕事上で何かしらの不祥事を起こした際には、必ずと言ってもいいほどに“責任を取って辞職します”という黄金句を使います。金を使い込んだクズ政治家とかね(笑)。

…待て待て待て、それは責任を取るんじゃない、単に逃げてるだけなんだよ。本当に責任を取るというのは、与えられた任務を最後まで全うする事なんじゃないか?

本作のゲイブも過失によるミスを犯し、一度は職務から去ります。しかし、救いを求める人がいる事を知ってしまえば行かずにいられないのは、責任を全うしようという気があればこそなんじゃないかと(ハルとのしがらみもゼロではないにしろ、こっちの方が大きかったと思う)。

デカい失敗をしてしまった人こそ、安っぽく放棄するのではなく、また&まだ挑戦し続けなければならない――それこそが“再起”であり、本作でゲイブが教えてくれる事なんじゃないでしょうか。

 

本作にはもう一つの“再起”があり、それはゲイブを演じるシルベスター・スタローンさんについて。

ご存知の通り、スタローンさんは『ロッキー』で大ブレイクし、その後も『ランボー』を初めとするアクションスター俳優の座に就きました。

しかし、この世は栄枯必衰&盛者必衰、そんなスタローンさんの黄金時代もピークを過ぎ、これを打破しようと(何故か)コメディ作品に走りますが、人気の右肩下がりに拍車を掛けてしまいます。

そんな折の、スタローンさんが再起を賭けた作品が本作でしょう。

過小評価として2ndブレイクとまで行かなかったにしても、その後も未だにコンスタントに主役を張れる、つまり現在のスタローンさんがあるのは、確実に本作の存在あってこそだと思います。

 

公開当時、監督であるレニー・ハーリンさんは、“暴力描写で血を遠慮なく見せるのは、痛みを想起させるからだ”といった旨の事を言っていました。

確かに、本作の劇中で流れる血の色は本物に近く、かつ血を出したキャラは総じて、キチンと痛そうな芝居を見せます。

人間の体を傷付ければ血が出る、血が出れば痛いのは当たり前です。

そんな当たり前を、オレンジやピンクと言った奇妙な色を血として、ごまかして見せる映画は少なくありませんが、それでは画の中の他人事にしか捉えられません

多くの人間は血に対し禁忌的なイメージを持ち、できれば見たくないものだと思っています。映画の中の暴力描写を嫌う人は、そういう感性が人一倍強いんでしょうね。

傷付けば痛いという当たり前の事をキチンと描く事で、現実世界における暴力の抑止力になる可能性は、決して低くないんじゃないかな?

俺はコイツをブン殴りたい→ブン殴れば血が出る→つまり痛い――そんな連想ができれば、その対象が自分になり得る事もあるという想像ができれば、安っぽく誰かを傷付けるような真似は控えると思うんです。

映画の中の暴力描写に感化されて、自分もやってみようと本気で思ってしまうのは、ただの子供か異常者だけです。

 

典型的な勧善懲悪、非道な真似をした(悪人)キャラは相応以上の報いを受ける、まさに因果応報な作風も好きです。

あまり深く考えずに楽しめる痛快アクションこそ、エンターテインメントの醍醐味!

確かラジー賞もいくつか受賞してましたが、何が気に入らねぇんだ、俺ッチはチョー好きだぞ?

 

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4Kレストア版と銘打ってはいるものの、古い作品には限界がある事を知らされます(笑)。ただのBlu-ray化くらいに思っておけば、肩透かしを食わずに済むかも。

吹き替え音声ありの、映像特典は予告編のみという最低限の仕様です。

吹き替えはスタローン=ささきいさおさんでないのが残念…。