246 沢木耕太郎 | 想像と創造を膨らませるビジネスチューインガム

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246/沢木 耕太郎
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20年以上も前に雑誌「Switch」に掲載されていた沢木耕太郎の日記的エッセイをまとめて、2007年に発表されたのが「246」。掲載時のことがよくわからないのですが、当時からこのコーナー名が「246」だったようです。


「246」とはこの日記的エッセイの中にも何度か出てくるのですが、国道246号線のこと。沢木耕太郎がこの国道近くの家(ウチ)から外に出て行きながら起こることを書いていることから拠点として「246」があることを示唆しているようです。


1986年1月から9月に沢木耕太郎がしたことや思ったことを書き綴っているのですが、当時がちょうど「深夜特急」の本を刊行しようとしているときで、まとめの段階に入っているところが描かれています。


「深夜特急」は間違いなく沢木耕太郎の最高傑作で、僕も最に読んだときはかなり没頭して読み耽ったのを思い出します。香港からシルクロード、イスタンブール、そして最後はロンドンへ。乗り合いバスで移動しながら、綴られるルポルタージュは肌に触れたものにしかわからないリアルなけだるさや怪しさなどを描ききっていました。


深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)/沢木 耕太郎
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もしまだ読んだことがない人がいれば、必ず読んでほしい本です。20年以上前の本なので、今の世界は変わっている部分もあると思いますが、決して色あせないものがそこにはあります。


ちなみに「進め!電波少年」での猿岩石のヒッチハイクによるユーラシア大陸横断はこの本をモチーフに行われた企画のようです。



「246」の話に戻りますが、日記であるので、特にこれを読まなければいけない、この先どうなるんだろう、というようなことはないわけですが、なぜか沢木耕太郎が出会う人々や作品を書く苦悩、娘とのやりとりなど全ての日記を読み通してしまう。


これを読み意味はどこにあるんだろう、そんなことを思いながら大きな装丁(A4ほどある)の本を読みすすめていましたが、残りわずかとなって、ハッと気づきました。


これって20年以上前のブログだな、と。


毎日、起こったことを当時はなかったインターネットの代わりに雑誌に掲載する。1日あたりの文章もかなりボリュームがあり、通常だったらこんな長い日記めいたものが掲載される場がなかったはずで、沢木耕太郎もあとがきに書いていたとおり、「Switch」という雑誌のおおらかさというか、文化的先進性というか、そういったものに助けられて書き続けて、発表され続けたわけです(計7回、隔月刊誌なので1年以上にわたる)。


ブログだと思ってみてみると、やはりというか当たり前なのですが、一日一日に行ったこと、考えたことをここまで書き続けるのはなかなか難しいな、という気にもなります。沢木耕太郎自身、日記を書くのは苦手といっているように、なかなかタイミングや条件が合わないとこうしたものは続けられないでしょう。


その一方で、ブログとしてこうしたアプローチはありなのではないだろうか、ということも思いました。確かに日記なんですが、そこにジャーナルな視点が入っている、プライベートなことも混じりながら、ありのままの日常が描かれているブログ。もちろんそんなものはどこかにあるのでしょう。でも自分の中では一つブログのあり方としてのヒントを「246」に貰いました。


それにしても沢木耕太郎は一人で何軒もはしごしてお酒飲んでます。人と会っても飲んでいます。でも酔いどれって感じがしないんですよね。