2017年度 講談社児童文学新人賞の受賞作『ラブリィ!』 | 読書と、現代詩・小説創作、猫を愛する人たちへ送る。(32分の1の毎日の努力を綴る)

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文学創作と大学通信等を書いています。【やりたい夢(小説家)がある1/2→夢を叶える努力をする1/4→完成作を応募(挑戦)する1/8→落選する1/16→落選しても諦めず・また努力・挑戦する1/32】(=日々、この1/32の努力を綴るブログです。笑)

表記の通り、一昨年の58回講談社児童文学新人賞を受賞した作品で、去年の6月に刊行されたばかりの最新作品が、吉田桃子著『ラブリィ!』。

講談社児童文学新人賞は、ここ2、3年、佳作止まりが続いたり、正賞を受賞する作品が少ない傾向でした。
本作が久々に2年連続の受賞作になる。
でも、どうなんだろう。

主人公のノリがあまりにマンガチックで、文体も会話主体でライトノベル的。
確かに講評で説かれている人間の美醜に関して、ティンエージャー的な悩みが描かれてはいるだろうけれど、
その深みのなさ、人物心理の掘り下げ不足に、
うーん、と首を何度も僕は捻らざるを得ない。

ちなみに、審査員の講評を抜粋すると、
「テンポのいい文章で、容姿について多方面から考えさせてくれる良作。希望を感じさせるラストも良かった」
「主人公が不器用ながら、いい奴なのも好感を抱いた。読後感が候補作の中で一番良かった」
「登場人物も魅力的で、しっかり書き分けられているのに感心しました。結末もよく、今回一番に推しました」

作者は、1982年生まれの若い書き手で、'15年に福島正実記念SF童話賞で佳作、'16年に小学館文庫小説賞で金賞を受賞しているから、
実力のある方なのでしょうが、なんか釈然としません。

僕の講談社児童文学新人賞は菅野雪虫さんの『天山の巫女ソニン』です。
こちらは、第46回受賞作。
文句なしの傑作ファンタジーであり、完璧な児童文学。
 
ところで、実は、『ラブリィ!』と同じ58回に佳作となった『マイナス・ヒーロー』というバドミントンを主題にした作品の方も少し前に読んでいだことを思い出しました。

こちらの審査員講評は、以下の通り。
「主人公がきらりと魅力的に輝く見せ場を、もう少し作ってあげるとさらによかったと思います」
「アンチヒーローの存在にスポットをあてながら、成長していく少年たちの姿を描いた。ただ少女・海の気持ちの変化など、細かなディテールがざつになってしまったのがもったいない」
「スポーツ音痴に私にも最後まで楽しく読めました。ただし、ストーリーの進め方が都合のよすぎるところが幾つかあり、構成を少し見直す必要があると思いました」

確かに、この作品は、講評通り、ご都合主義が目立って強引な展開が、僕も気になり、
「?」これで佳作か、と思いつつ、
でも、いつかバドミントンを舞台にしてスポーツ小説、書く際には参考にしようか、なるかな?、と思った記憶があります。

この手の、審査員講評って、皆の言うことを聴くと必ずひっちゃかめっちゃかになるので、
書き終わってから「観るポイント」を改稿や推敲時のチェックに使う程度でいいのだと、僕は思っています。

講評を参考にするなら、
誰か一人、信頼できる選考委員に注目して、その人の感性を自分のものにした方が、勉強になるでしようか。
僕の信頼する読み手としては、小説家の高橋源一郎さん、ご自身の作品としても講評としても首尾一貫していて、
その講評集『超小説教室』は、凡庸の小説の書き方マニュアル本を読むより100倍勉強になりますから、お勧めですよ!