退職後、私達は、夫婦での旅行を楽しみにしていた。しかし考え方が少し違っていた。夫は、行きたいところへは行きたいし、一旦出国したら、1か月以上日本を離れて、なるべく旅行期間を長くしたいと言う。何度も出国するより、一旦出国したら、目的地の空港から、近くを巡ってみたり、経由便の場合は、経由国に入国し、楽しみたいという考えである。

 

一方、私は最長2週間程度と考えている。仕事は辞めたけれど、嫁、娘、母の立場は残っていると思っている。義母は93歳。施設に入居し元気とはいえ、だいぶ物忘れも進んでいる。父は86歳で、一人暮らし。家事全般をこなせるが、視力がだいぶ衰えている。二人とも高齢で急に体調が悪くなったとしても、すぐ帰国できない。また、学生の息子を一人にしたら、汚部屋になるんじゃないかって思っている。

 

実際、2週間ほど家を空けていても、問題はなかったし、息子は、一時的に一人暮らしできたことを喜んでいた。予想に反し、自宅も汚部屋になることなく、自炊に慣れ、洗濯を午前中に済ませ干していたようだ。幸い、不在の間、何事も起こらなかった。

 

旅行は楽しいけれど、長期間家を空けることへの不安を息子に伝えたところ、「お母さん考えすぎだよ。僕が死ぬわけでもないし、いったい、僕は何歳だと思っているの?できたら、1か月くらい行ってきたら?」と言われ、はっとした。

 

義母や父の様子を見ていて、彼らが抗えない老化によりできなくなることが増えていくことを予想し、日頃の息子の生活を見ていて、一人にしたら家がめちゃくちゃになると、思い込んでいたのだ。自分の思い込みなのに、それが正しくて、思い込みをベースに起こりそうな未来を予測し、そうなったときにはどうすればいいのか、解決策を考えようと、必死に脳内シナプスを活性化し、未来のストーリーを描こうとしていた。

 

心配する気持ちは、相手を思いやり、想像力のあるエネルギーだ。相手を思いやる気持ちは自分の内側に秘めておけばよくて、私達は100%楽しんでいいのだ。息子の一言で、目が覚め、自分を許可することができた。

 

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