◆前回のあらすじ◆
前回——閉ざされた扉の代わりに、現れたのはMだった。
責めずに、隣にいてくれた。
3年目にして初めての、店の外の関係。
【お金の話】
帰る間際になって、お金の話が始まった。
具体的な中身は書かない。
書かないが、それは「察してくれ」ではなく、はっきりとした要求の形をしていた。
帰国してからも、お金の話は続いた。
お土産もねだられた。
自分の分だけでなく、友達の分まで。
急激に、冷めた。
我ながら現金なものだと思う。
20万送った男が、今さら何を、と読者は笑うだろう。
でも、違うのだ。
Zへの送金は、私が勝手に送っていた。
Mのそれは、請求だった。
この二つの間には、うまく言えないが、決定的な川が流れている。
ずっと一緒にいてくれた数日間は、なんだったのか。
優しさだったのか、営業だったのか、その両方だったのか。
たぶん、両方なのだ。
この世界で3年学んだ結論を先に言ってしまうと、彼女たちの優しさと計算は、分けられない。
貧しさは、愛情に請求書の書き方を教える。
それを責める資格が、石鹸に2万円払って気持ちよくなっていた私にあるとは、どうしても思えない。
思えないが、冷めるものは冷める。
人の心は、正論では動かない。
◆次回予告◆
第5話「『私は待っていたのに』」——冷めた気持ちのまま帰国した男に、追い返したはずのAから電話が入る。
この物語は全4部の実録エッセイです。
第1部・第2部・幕間は全話無料、クライマックスの第3部はnoteで公開しています。
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