◆前回のあらすじ◆
前回——事件続きの合間の、友達との再会。
Grabでピザを送る顛末は、笑い話と共に「また、パロパロ認定」というオチに終わった。
【「お店だけで仕事をします」】
決まっていたはずの渡航が、流れた。
私の仕事のスケジュールが、どうにも動かせなかった。
色々と調整はしてみたものの、結局、さらに翌月に持ち越すことになった。
彼女に何と伝えればいいのか、悩んだ。
会いたい気持ちは、募る一方だったはずだ。
それなのに、また先延ばしになる。
申し訳なさが募った。
その後も、当たり前の日常が続いた。
彼女は、まだ復職していなかった。
療養と、事件の後始末とで、それどころではなかったのだと思う。
だが、ある日——ついに、お金に切羽詰まった。
彼女は、仕事に復職することを決めた。
そして、復職からしばらくしたある日。
「相談したいことがある」
そう、連絡が来た。
相談の中身は、こうだった。
同伴をしたがっている客がいる。
同伴すれば、まとまったお金がもらえる、と。
最初、私はこう言った。
「そういう仕事なんだから、仕方ない。
行っておいで」
頭では、そう割り切ろうとした。
彼女の生活を、私が制限する権利はない。
だが、よくよく話を聞いていくと——金額は、大金だった。
そして、条件があった。
一日中、その客と一緒にいてほしい、と。
それを聞いた瞬間、私の中の何かが、切れた。
「ふざけるな。それは、やめてくれ」
必死に、説得した。
理屈より先に、言葉が出た。
彼女は、思いとどまってくれた。
そして、こう言った。
「あなたがいてよかった。
私一人だったら、間違った選択をして、後悔していたと思う」
私は、お店だけで仕事をします。
その一言に、彼女の中にある一線を見た気がした。
切羽詰まっていても、譲らない何か。
第5話で、彼女は「もう、あの仕事はしたくない」と言った。
それでも、生活のために店には戻った。
矛盾しているようで、矛盾していない。
生活のために戻った場所でも、越えてはいけない一線だけは、自分で引いていた。
その一線を、今度は、私が一緒に守った。
◆次回予告◆
フィリピン編 第10話——二人の関係史上、最も大変なことが起きた。
それは、別れだった。。。
この物語は全4部+続章の実録エッセイです。
日本編(第3部)は結末が有料。フィリピン編は、いまのところ無料で公開しています。
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