◆前回のあらすじ◆
前回——地元でもパブで働くことを選んだG。
私は「嫌だ」という感情を飲み込んだ。
止める権利は、私にはない。
そして、送金の話になる。
【本当に、私だけなのか】
送金は、少しした。
初めての送金は、20000ペソ。
アパート代の足しになればと思った。
ただ、送る前に、私はどうしても確認したいことがあった。
本当に、私だけなのか。
電話で、それを聞いた。
疑わしいことはないか。
他に、誰かいないか。
10年通った世界で染みついた、拭っても拭っても消えないこの問い。
Zにも、Aにも、確かめられなかったこと。
答え合わせのないまま終わった、あの恋たちの記憶が、私にこれを言わせる。
Gは、「大丈夫」と答えてくれた。
その返事を信じて、私は送金した。
信じた、というより、信じることにした。
疑い続けることに、私はもう疲れていたのかもしれない。
【連絡が、減っていく】
ところが、その後も、連絡の頻度は減っていった。
不安になる毎日だった。
送金した途端に連絡が減る——日本編なら、これは「よくあるパターン」として身構えるところだ。
お金だけ受け取って、フェードアウト。
Zの時も、Mの時も、似たようなことがあった。
でも、後で分かる。
この時、彼女は体調を崩しかけていたのだ。
私に心配をかけまいと、痛みを隠して、連絡を控えていた。
彼女らしい、と思う。
日本編の「連絡が来ない」は、恋の駆け引きだったり、他の客だったり、通信量だったりした。
フィリピン編の「連絡が来ない」は、彼女が痛みに耐えている証だった。
同じ現象なのに、意味がまるで違う。
私は、10年かけて疑うことばかり覚えてきたけれど、今度ばかりは、疑いが的外れだった。
【会いに行きたい】
不安が、いっぱいになった。
私は言った。
すぐに、会いに行きたい。
彼女はすぐにでも働きたがっていた。
お金のために。
でも私は、逆のことを言った。
仕事はしないで、一緒に過ごしたい。
その間の費用は、私が出すから。
……書いていて、気づく。
これは、私がずっとやってきたことだ。
お金を出して、相手を自分のそばに置く。
Zに送金し、Aに衣装を買い、そして今、Gに「働かなくていい、金は出す」と言っている。
形を変えて、同じことを繰り返している。
10年、学ばない男である。
ただ、一度フィリピンに行っているので、渡航のハードルは、めちゃくちゃ下がっていた。
前は「海外へ一人で」というだけで一大決心だったのに、今は「また行けばいい」くらいの気軽さになっている。
人は、二度目からは、驚くほど身軽になる。
私は、航空券を予約しようとした。
◆次回予告◆
フィリピン編 第4話——「この日の何時に着く」。
そうLINEを送って、眠りについた。
ところが翌朝、予約ボタンを押す指が、なぜか止まった。
この物語は全4部+続章の実録エッセイです。
日本編(第3部)は結末が有料。フィリピン編は、いまのところ無料で公開しています。
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