◆前回のあらすじ◆

 

前回——帰国したGの、残り3か月のマニラ暮らし。

 

手元のお金はわずか。

 

私は画面越しに宿を探し、まず「ゆっくり過ごして」と伝えた。

 

 

 

 

【休むことも、できなかった】

 

 

 

 

落ち着いた彼女は、好きだったレストランに出かけた。

 

やっと一息つける。

 

私もそう思った。

 

ところが、料理を注文した後、彼女は頭痛に襲われた。

 

せっかくの食事をテイクアウトにして、ホテルに戻ることになった。

 

それから、熱と頭痛。

 

かなり大変そうだった。

 

無理もない、と思った。

 

ほぼ3か月、休みなく働いていたのだ。

 

国へ帰って、張り詰めていた緊張が解ければ、体はいっせいに悲鳴を上げる。

 

頑張っていた人ほど、休んだ瞬間に倒れる。

 

彼女は、頑張っていた人だった。

 

体調不良で何もできず、私はさらに3泊、別のホテルを取った。

 

海の向こうから、私にできるのは、やはり宿を取ることくらいだった。

 

無力な貢献である。

 

でも、ゼロよりはましだと信じたかった。

 

 

 

 

【友達の家に、住む】

 

 

 

 

その別のホテルに移った1日目、彼女は友達3人と食事に出かけた。

 

そして、そのうちの一人の友達の家に、「住む」とも「ホームステイ」ともつかない形で、住むことになった。

 

……フィリピン人は、すごいな。

 

日本人の感覚では、こうはいかない。

 

友達の家に転がり込んで、そのまま暮らし始める。

 

頼る方も、頼られる方も、そこに大きな躊躇がない。

 

家族でなくても、家族のように助け合う。

 

私が3時間かけて心配していた「住まい問題」は、彼女のコミュニティの中で、あっさり解決してしまった。

 

私の心配は、たいてい、彼女の世界では杞憂に終わる。

 

10年経っても、この感覚のズレには、まだ慣れない。

 

 

 

 

【手っ取り早い仕事】

 

 

 

 

そして、仕事のこと。

 

彼女が選んだのは、手っ取り早く稼げる仕事——地元のフィリピンパブだった。

 

正直に書く。

 

個人的には、嫌だった。

 

日本の店で出会った彼女が、地元でも同じ世界で働く。

 

その光景を想像すると、胸の奥がざわつく。

 

でも、しょうがない。

 

3か月の辛抱だ。

 

彼女には生活があり、送るべき家族がいて、貯めるべき将来がある。

 

私の「嫌だ」という感情には、彼女の生活を止める権利など、どこにもない。

 

例の友達も一緒に働くらしい。

 

1日に500から1000ペソを稼ぎ、深夜はGrab(配車アプリ)で帰る。

 

夜のマニラを一人で歩くのは危ない。

 

だからGrab代がかかる。

 

稼ぎからそれを引けば、手元に残るのは、たいした額ではない。

 

たいして、お金は貯まらないだろう。

 

計算すればするほど、切なくなる。

 

彼女は、貯めるために働いて、その働くために(安全のために)お金を使う。

 

前に進んでいるのか、その場で足踏みしているのか、わからなくなる。

 

日本編で私が"客"の側から見ていた世界を、今度は"送り出して待つ"側から見ている。

 

同じ夜の店が、まるで違う場所に見える。

 

 

 

 

◆次回予告◆

 

フィリピン編 第3話——送金。

 

その前に、私はどうしても確認したいことがあった。

 

「本当に、私だけなのか」。

 

日本編から10年、いまだに消えないこの問いを、私はまた口にする。

 

この物語は全4部+続章の実録エッセイです。

 

日本編(第3部)は結末が有料。フィリピン編は、いまのところ無料で公開しています。

 

▼noteで読む

https://note.com/sansokume