【三足の、その後】
一足目のナイキは、激情に終わった。
二足目のナイキは、同情に終わった。
三足目のナイキは、いまも隣にある。
こうして三行で並べると、まるで最初から決まっていた物語のように見える。
だが、書いている本人が一番よくわかっている。
これは、決まっていた物語ではない。
行き当たりばったりで、みっともなくて、その都度本気で、その都度間違えた、ただの記録である。
一足目のパンダは、今どこの道を歩いているのか知らない。
二足目のZoom Vomero 5が、鉄格子の家のどこかにあるのかどうかも知らない。
三足目のAir Force 1だけが、海の向こうと、こちらで、同じ形をしている。
三足のうち二足は、行方を知らない。
これが、10年の収支である。
【三人に、申し訳ないと思っていること】
正直に書く。
三人とも、私は幸せにできなかった。
Zには、感情をぶつけすぎた。
Aには、たぶん、私の重さが伝わりすぎた。
Mには——Mには、一番ひどいことをした。
黙って消えて、都合よく戻って、また離れた。
この連載で私はずっと「振り回される側」の顔をして書いてきたけれど、Mに対してだけは、まぎれもなく振り回した側だった。
彼女たちは、フィリピンから海を渡って、日本の夜の店で働いていた。
家族のために。
故郷に残した誰かのために。
その人たちの数年間に、私という客が、良くも悪くも登場した。
私にとっては恋でも、彼女たちにとっては仕事だったのかもしれない。
あるいは、仕事の中にほんの少しだけ本気が混ざっていたのかもしれない。
その割合を、私は最後まで知ることができなかった。
答え合わせの時間は、この世界には用意されていない。
何度でも書くが、これが夜の恋の、一番残酷なところである。
◆次回予告◆
振り返り(2)——しんみりした直後にこれを書くのもどうかと思うが。
10年で、私はほとんど成長していなかった、という笑えない自己分析の話。
この物語は全4部の実録エッセイです。
▼noteで読む(第1部から)
https://note.com/sansokume
